Hirorororo

くじらびとのHirorororoのレビュー・感想・評価

くじらびと(2021年製作の映画)
4.2
まずは、どんなアクション映画よりも本物の緊張感と迫力を感じる鯨漁のシーン。鯨の蠢きが重低音で腹に響いて、ドローン空撮と水中撮影も混ざった映像が、もちろん切り取って編集された作られた映像なんだろうけど、圧倒的なリアルを感じさせて映画館で見る価値を確信した。加えて、それまでの「くじらびと」のストーリーがドキュメンタリーなんだけど失礼ながらプロットがあったんじゃないかと思ってしまうような(もちろん完全なリアルなはず)ドラマが展開されてめちゃめちゃグッとくる見せ場になっていた。さらに、鯨側の視点まで込めてあったり、全てがうまく運ぶわけではなかったり、なんというか、もう全てのシーンに意味を感じる完璧に高密度な作品だった。
描かれているラマレラ村の暮らしには、生きるための鯨漁を軸にした村人の役割、ルール、伝統文化や宗教観が存在していて全ての営みに機能美が内在されているような美しさがあった。
スマホを持っている若者が映り込んでいたりもして、そこもまたリアルだったけど、完璧に閉じた世界でなくてもまだこのような文化が維持されているというのはポジティブに捉えることもできるのかな、と思った。
エーメンのお父さんの、「バリ島で暮らしたこともあったがお金に追われる生活に嫌気がさして村に戻ってきた」という言葉はこのラマレラ村の文化を世界に伝えるべき重要なメッセージが含まれている気がする。
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