Sachika

流浪の月のSachikaのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.2
赦しと癒し。
恋愛とも友情とも違う、2人の不思議な関係は、私の眼にはとても神聖で尊く見えた。

「文に死ねと言われたら、死のうと思った」
更紗が口にしたその言葉がずっと頭に残っている。
少女誘拐の”被害者”と”加害者”と言うレッテルを貼られても、それでも普通の人に溶け込もうと生きてきた2人。
その更紗の言葉に、更紗の生きる理由(死ねない理由)や、二人の繋がりの神聖さが見えた気がして、気づいたら涙が止まらなかった。

登場人物の細かい性格の説明がなくても、そのキャラがどんな性格で、どんな人生を歩んだか、表情で見せてくれるなと思った。
「文は彼しかいないでしょ」と監督に言わしめる、松坂桃李さんは言わずもがなだし、広瀬すずちゃん演じる更紗から発せられる一言一言と、その表情には、ずっと心臓がギュッとなっていた。
でも一番は横浜流星さんの怪演。もう本当に怖い。
彼はキラキラしてる作品のイメージがつきがちだけど、新聞記者のドラマ然り、鳥肌が立つような演技をしてくれるよね。

また本作の「母親」について考えさせられる所が多かったんだけど、実際に登場した母親は2人かな?
人物像すら出てこず、「捨てられた」という情報のみなのに、全ての母親たちを毒親だと思うのは、趣里さんの演技の賜物だと思う。
きっと同じように、ああやって男について行って、子どもを捨ててしまったんだよなあと、脳内で補完できる。

あんまり今まで俳優さんたちについての感想を書くことが無かったけど、2時間半、本当に圧倒されっぱなしの俳優さんたちの演技力に、書かずにはいられなかった。
公開が本当に本当に楽しみだし、もう一度観たい。
Sachika

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