センター分けのましゅちゃん

流浪の月のセンター分けのましゅちゃんのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.6
微かな愛の残り香を頼りに
出口を探す更紗と
烙印を背負ったまま流浪する青年。
15年前の女児誘拐事件を軸に
交差する幾つもの運命。

物語を飾り付ける色彩と
情景が痛く、美しい。
人物達の感情の揺れを
リアルに描写する"静"の間合いにも
一切の無駄なラグがなく
ただ息を呑む150分。

流れる物語を刹那のうちに愛と
安心感に変えたり、
かと思えば緊迫感と
閉塞感変えてしまう
キャストの皆さんの演技力が凄い。

アイスクリームやコーヒーといった
更紗や文を象徴する
甘さやビターなワンアイテムも
ふとした時に見せるこだわりで
物語を彩っている。

他者からは覗けない
"真実の愛"は2人だけのもの。
その閉ざされた過去に
救いを求める烙印を背負った2人と
無理に風穴を開けようとする
周囲の目が痛く刺さる。

堰き止められた思い、苦しみは
激流とはならずとも
ゆるやかに流れはじめ、
2人だけの過去とその居場所を守る。

2人の行方を見守る月明かりに
じんわりと余韻が広がる物語が美しい。