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流浪の月の708のネタバレレビュー・内容・結末

流浪の月(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

原作は未読。「悪人」といい「怒り」といい、李相日監督の作品って、やはり熱量がかなり高くて、今回も観終わってかなり疲労感がありました。もちろん、悪い意味じゃありません。観る側の熱量も相当ですが、それ以上に演じる側や制作する側の熱量も、かなりだということが改めて伝わりました。「パラサイト」「母なる証明」「哭声/コクソン」「バーニング」(全部好きな映画!)の撮影監督のホン・ギョンピョが撮影を担当。その場の空気感がそのまま伝わってくるような画が綺麗でした。これは劇場のスクリーンで観た方がいいです。

自分が冒されることなく、搾取されることなく、存在を否定されることもなく、ありのまま自由で自分らしくいられる関係を築ける人物。金銭にも肉体的にも利害関係がなく、恋愛のようなそうじゃないような絶妙な関係でいられる人物。あえて言葉にするなら「理解者」という存在。そんな人物がたまたま9歳差で、第二次性徴が来ない病気を持った大学生と大人びた小学生だっただけなんだと僕は捉えてます。帰る場所や心の拠り所を失くした者同士が心を寄せ合う関係。

でもやはり世間的に見ると、ちょっとおかしいとなってしまうのもわかります。子供とそんな信頼関係が築けるはずがないという偏見。「気持ち悪い」「ロリコン」という言葉で、自分には理解できないものを排除しようとする私見の正義感。児童が被害者となる性犯罪も世の中で多々起きているわけだから、色眼鏡で見て勘ぐる人がいるのも当然だとは思います。どんなに子供が事実を主張しても、大人に言いくるめられているだけに決まってるという決めつけ。現にそういうこともあるので、なかなか判断が厳しいところ。そして加害者だけでなく、被害者までも加害者と同じような奇異な目で見られてしまうのもありがちな流れ。結局、真実は当人同士にしかわかり得ないものなんです。それでいいと思ってます。だから、このラストはハッピーエンドだと僕は捉えてます。

松坂桃李、横浜流星、多部未華子もかなりよかったですが、特に「怒り」でのかなり衝撃的なシーンを経て、女優として大きく成長した広瀬すずが、この映画でさらに成長を見せてました。最近は姉の広瀬アリスを目にすることがかなり多かったけど、地道に着々と進化を遂げてるなぁと感じました。

三浦貴大は「怒り」「淵に立つ」「望み」のときもそうだったけど、登場シーンは長くないものの、存在感をしっかり残す大事な役どころのバイプレイヤーとして登場することがありますが、今回もまさにそういう感じでした。本当に素晴らしい役者さん。

内田也哉子はもう、二代目樹木希林を襲名でいいのではないかと思いました。
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