くるみ

流浪の月のくるみのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.1
「更紗は、更紗だけのものだ」

原作の小説が好きで、映画化を楽しみにしていました。
場面がぶつぶつと途切れる感じは否めないけど、そこそこ原作に忠実です。
ただ、結局趣里は帰ってきたのかとか、アンティークショップのご主人がなぜ更紗にグラスをくれたのかとか、説明不足なシーンは多々あります。
個人的には10年後が描かれている分、原作の方が救いがあるように感じましたが、映画の方が現実的な気もしました。
映画を観て興味を持った方はぜひ原作も手に取ってみてください。
文章が綺麗で読みやすいのでオススメです。
せめて文のカフェの店名(calico)の意味だけでも検索してみてください。
文の想いの深さに気付かされます。

何より松坂桃李くん!
存在感、佇まい、話し方…思い描いていた以上に文そのものでした。( 長くて美しい指にも注目☝️✨)
すずちゃんも良かったです。
今回のベッドシーンやDVシーンといい、『怒り』のレイプシーンといい、李監督作品では若手の人気女優とは思えないほど身体を張った演技が多いですよね。
それだけ監督からの期待や信頼が厚いことの表れなのでしょう。
流星くんのクズ役は初めて見たけど、彼もまた挑戦だったと思います。
役者としての印象が変わった人もいるんじゃないかな。
でも話が端折ってある分、モラハラDVゲス具合は原作の2割減でした。(原作の亮介はあれ以上に粘着質な暴力男です)

大学生の文が小学生の更紗に傘を差し出すシーン…これがこの物語の始まりですが、勝手にキラキラした柔らかい水色のイメージを持っていたので、映画では薄暗い不気味な印象で描かれていてビックリしました。
でもそうですよね。世間的には誘拐ですもんね。
これが主人公の視点で読んだ原作(真実)と起こった出来事(事実)の違いなのかなと漠然と感じました。

私はこの作品で "デジタルタトゥー“ という言葉を知りましたが、無責任な発言や軽はずみな投稿で人を傷つけることのないよう、SNSとのつき合い方を考えるきっかけにもなりました。
インターネットの情報やテレビの報道も全てを鵜呑みにしないよう気をつけたいです。

文と更紗がこの先も一緒に居ることを誰も邪魔しないで。批判しないで。せめて放っておいて、と願うばかりです。 
くるみ

くるみ