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流浪の月のt0moriのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.0
深い。

前日の『死刑という病』に続き、奇しくもDVサバイバーを扱った映画を立て続けに観ることになってしまったが、こちらは極めて誠実により深く、それぞれの生きづらさの中でもがく人々を描いている。

月というそこに絶対的に有りながら、形を変え見る度に印象の移ろう物と、揺らぐ水というふたつのモチーフで登場人物たちの心象が綴られているのが良かった。特に水はそれぞれのシークエンスで温度も感触も違う様に計算されていて、それぞれが違う印象を残す。

広瀬すずは話題の濡れ場を別としても、明確に新たな階段を上がった様に思う。特に傷付いて文の元に身を寄せ、どうしようもなく溢れ出す感情を吐露するシーンなど、こちらの身が震える様だった。その分、最後の台詞の幼さの残る音が、少し物足りない気もした。

本作では悪役だけれど横浜流星も良い。行き場のない希求と怒りに煩悶する青年を、真っ直ぐ演じていて好感。

なんといっても松坂桃李の線の細さ、寄る方ない孤独の中で、繋がることを諦めながらも生きて行こうとする姿に、儚さと極めて純度の高い存在感があって、圧巻だった。その秘密を明かすシーンはCGを駆使したらしいけど、肉体的な説得力が半端なくあった。どこまでがCGだったんだろう?

内田也哉子も意外な起用で驚いた。ガラス越しの演出の巧さも相まって、我が子との絶妙な距離感が出ていて良かった。
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