ハリィしろかわ

流浪の月のハリィしろかわのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.8
■映画「流浪の月」観て辛すぎるが、見応えあった件🌙

▶広瀬すず&松坂桃李ダブル主演で話題となった本作。李相日監督のヘビーな演出は本作でも炸裂。

▶10歳の時に誘拐事件の「被害女児」として世間に知られた家内更紗(かないさらさ)とその事件の「加害者」とされた当時19歳の大学生、佐伯文(さえきふみ)。
5年後に再会した更紗と文は、世間には決して理解しがたい関係を持ち始める。

▶時間軸が入り組みながら、更紗と文の出会い、身内からの仕打ちが徐々に明らかになる。
心の傷を抱え続けた二人は、お互いにその傷を癒やすうちに、傍から見れば奇異にしか見えない、友情でも恋愛でもない不思議な繫がりを持つ。
前半は文が更紗を救い、後半は更紗が文を受け入れるストーリー展開。

▶更紗役を広瀬すず、文役を松坂桃李が演じる。広瀬すずは本作にて今までのイメージを覆すほどの大胆な演技に挑戦。女優としての成長を確実に見せる。ある意味、汚れ役にも果敢に挑んだことに驚き。

▶松坂桃李は近年主演映画が立て続けに公開、まさに活躍の勢い著しく、本作でも複雑な文のキャラクターを見事に自分のものにしている。画面どアップで映る眼力&黒眼が強烈。
全編を通してあまり感情を見せない文が、終盤、感情を爆発させる件はまさに桃季アクトの真骨頂。

▶そんな二人を極限まで追い込み、迫真の演技を引き出す李相日(リ・サンイル)監督の緊張感あふれる演出が前作「悪人」「怒り」に引き続き、今作でも随所に見られる。
嫌悪感のあるシーンも少なくないが、「しっかりと映画を観た」と実感させる力量の持ち主、それ李相日監督。

▶ネタバレは避けるが、親からの愛情が欠乏した二人が抱えるトラウマは心が痛む。
また、文が恋人のあゆみ(多部未華子)に本当のことを告白できず、心にもないことを言い放つシーンは辛すぎる。ある意味、本作で一番つらいのはあゆみかも。

▶一方、劇中、更紗と文を常に見守るかのような月、二人の出会いに必ず降る雨、安穏の時を象徴するかのようなガラスの光や風になびくカーテン等、要所要所に出てくる風景も印象的。
しんどいストーリー展開の中で一種の癒やしの効果あり。
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