安堵霊タラコフスキー

送られなかった手紙の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

送られなかった手紙(1959年製作の映画)
5.0
ダイアモンド探索の話っぽいが、その設定も殆ど山林というシチュエーションの為で、その山林におけるカラトーゾフの演出を堪能するのが主となる映画だったけど、その演出に黒澤明以上の拘りが見られて恐怖心すら覚えた。

冒頭の長回しから期待通りのヤバさが垣間見えるけど、その後も炎のコラージュさせた探索のシーンやダイアモンドを見つけたときの歓喜のシーン等激情的演出が続いて、後に同じロシアで撮られる僕の村は戦場だったや炎628に通じるような激烈さを目の当たりにして唸りに唸った。

そんな前半だけでも十分良いのだが、そこから特にとんでもない山火事のシーンが中盤から始まり、木々が一面燃え盛って時には火の雨すら降り注ぐ様はそれだけで戦慄ものだったのだけど、そのシーンの為に一つだけでも十分地獄的な長回しのカットをいくつも重ねていて、撮影風景を想像するとあまりに狂気的で震えた。(しかもその全てが恐ろしいくらい素晴らしい!)

というかこの山火事のシーン、本物の弓矢使った蜘蛛巣城ですら可愛く思える凄まじさがあったのだけど、撮影中死人出してないかマジで不安になる程に途轍も無いもので、この一連のシーンだけでも一見の価値はあると心底思う。

その後も見てるだけで過酷さの伝わる、さながら自然で地獄を表現したかのようなシーンが最後まで続き、見終わると壮絶さに放心状態になってしまった。

ということでめちゃくちゃ恐ろしいと思いつつ、だからこそやはりカラトーゾフのように演出全振りの映画を撮る監督は最高だとつくづく思ったが、彼が同じタイプの天才であるタルコフスキーやパラジャーノフと比べて世界的な評価が低いのはあまりに不当だとこれまたつくづく思う。