きゅうげん

レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―のきゅうげんのレビュー・感想・評価

3.6
聡明な軍師たちが計略を張り巡らし、勇猛な将軍たちが鬼神の如く闘う、アクション史劇巨編ここに完結。
漢字文化圏が共有する『三国志』という素材を、国や地域の垣根を超えたスター俳優の共演で再構築できたことは、とても言祝ぐべきもの。やはり金城武やトニー・レオンにチャン・チェンなどの国際派俳優の存在は大きいですね。
(トニーやチャンが今まさにハリウッドで大躍進してることを考えると、金城さんの早期リタイアは勿体なく思えます……)

前哨戦をふわっと描いた前編とうって変わり、決戦に至るまでの工作活動や心理作戦など、後編は戦争映画としてのクオリティがよりシビアでソリッドにまとまっています。
偽装投降をするのが黄蓋→小喬という改変や、尚香のスパイ大作戦という創作なども、情に訴えるドラマ性の引き上げに寄与してます。
……が、そのオリジナル部分がかな〜り蛇足な感も。
尚香の友情場面も小喬の恋愛場面も『三国志』らしいポリティカルな緊張感を削いでしまってますし、なにより魏・呉・蜀の上層部が全員参加で、キャラクターがずっと飽和状態。ストーリーもアクションも人数を捌き切れていない印象です。
そしてやっぱり頭脳バトル感の薄さ。赤壁の戦いは曹操・孔明・周瑜のタイトルマッチはもちろん、龐統や徐庶に魯粛など周辺人物もみんなキレ者で、腹の探り合いに胃が痛くなるくらいじゃなくちゃ。

『三国志』を映像化するなら、前編:赤壁(三国鼎立の駆け引き)→後編:北伐(諸葛亮vs司馬懿の頭脳戦→盛者必衰エンド)を、このスケールで観たかったかな。悲劇の若き天才・姜維が大好きなので。
ちなみに『三国志』の個人的なお気に入りポイントは、急にテンションがコロコロコミックみたいになる南蛮行です。