Junichi

バトル・ロワイアル 特別篇のJunichiのレビュー・感想・評価

4.6
「いいか。人のこと嫌いになるってのは、それなりの覚悟をしろってことだからな。無責任?知らねぇ馬鹿野郎!…最後の一枚。クッキー美味かったなぁ…。」

【撮影】9
【演出】9
【脚本】9
【音楽】9
【思想】10

深作欣二監督の実質最後の作品

原作は高見広春の小説(太田出版)
原作小説が物議を醸し
出版まですったもんだがあり
映画化された際にも
国会で議論された問題作

本作品以降
いわゆるバトルロワイヤル物や
デスゲーム物がたくさん産まれました

自分も当時
この作品に批判的でした
「殺し合いをする作品で感動するなんて、おかしいんじゃないの?」と

しかしその後
原作小説を読み
映画も観ることで
その考えを改めました

殺し合うというのはあくまで設定で
ここまで哀切に
思春期の愛、友情、生きること
これらを誠実に描いた作品は稀有だと思います

深作欣二監督は
原作のこのメッセージを的確に読み取り
さらに深めて際立たせることで
本作品を完成させました
そのことは
特別編に収録された未収録シーンを観るとよくわかります

前田亜季演じる中川典子と
北野武演じるキタノの関係を
深作欣二監督は中心に考えていたことが分かります

原作小説との大きな違いは先生の役割
原作では金八先生のパロディで
そこまで大きな役割が与えられていませんが
映画では北野武演じる「キタノ」が重要な役割を演じています

ビートたけしと山本太郎の関係や
柴咲コウのデビュー作品という意義
前田亜季はじめ
栗山千明
美涙
安藤政信
塚本高史
高岡蒼輔など
才能のきら星で見所盛りだくさんです

藤原竜也の演技はすでに
蜷川幸雄演出に毒されています(笑)

映画最後
キタノをめぐるシークエンス
藤原竜也演じる七原秋也にマシンガンで打たれ
「痛え。痛えなこの野郎!」とキタノが言うのが印象的です

【傷つけられたら痛いんだよ】と
深作監督が本映画で一番伝えたかったメッセージ

そして
いま最も必要なメッセージ

相手の心と体の痛みに共感できない
感受性トンチンカンな
多くの現代人にオススメです(毒)!
Junichi

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