ロアー

私ときどきレッサーパンダのロアーのレビュー・感想・評価

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)
3.8
「あの夏のルカ」に続くピクサー25作目。コロナ禍でのピクサー作品の公開も、もう3作目になっちゃったんですね。
ディズニー映画は劇場公開・有料配信、ピクサー映画はオンラインのみ・無料配信というのが、どういう決め事で成り立っているのかなかなか気になるところです(ピクサー名義とは言え、ディズニーと共同で作ってるからなおさら)。

それはさておき、初めて予告を観た時からなんとなくアンガーマネジメントがテーマの映画だろうと予想していたら、怒りだけじゃなくもっと複雑な感情を抱えた思春期の娘と過干渉な母親のお話でした。

冒頭から思春期の10代のテンションが炸裂していて、遥か大昔にこのノリを忘れてしまった私は果たしてこの速さについていけるのか?と心配になってしまいましたが、最後には「めっちゃおもしろい~!」とニコニコです。

母親のせいでメイが思春期最大の黒歴史になりそうなできごとに見舞われた時は、思わずこっちまでいたたまれなくて思わず「ギィイィイイ~!!!」と奇声を上げてしまいました。「いやぁぁ~それはやめて~やめてあげて~!」と思いっきり叫びながら観れた点は配信で良かったかも知れません。
もうね、自分がメイと同じ目にあったら到底学校に行けない。完全に引きこもりになる。メイのポジティブなメンタルまじで尊敬する。

この手のタイプの母親って、偏見かも知れないけど文化が違うからかアジア圏に多い気がしました。母親がめっちゃ強くて父親の発言権がない感じも含めて「分かるわ~」ってなる人、日本にたくさんいると思う。欧米の映画ではあまり観たことないタイプの家族像だったので、ディズニーの映画でこんな形の家族の姿が観れるのが新鮮でした。ディズニープラスで配信されている短編を中心に、最近こう言うアメリカンスタイルなお話でもなくアメリカ人から見た他文化のお話でもなく、様々な人種や若手のクリエーターたちが自国の文化や自分の経験を元に作り出したと感じられる作品が増えているのなんかすごくいいと思う。
大手のディズニーだからこそできることだろうし、こういう流れを大事にして欲しいです(ただし、実写化となるとなんかいつもちょっとズレてる気がするのでそこは頑張って欲しい)。

思春期を迎え、芽生えたアイデンティティに戸惑いながらも成長しようとする娘。
無自覚にも娘を自分のミニコピーに育てることが正しいと思い込んでしまっている母親。

母も子もお互いを大切に思うが故に傷つけ合ってしまう・・・実は結構扱いの難しいテーマだったと思うけど、スピード感あるテンポとコミカルな演出、何よりレッサーパンダというモフモフでかわいい存在をアイコンにしたことで重くなりすぎず、むしろポップで楽しいテイストに仕上がっていたのがお見事でした。

自分らしさを押し殺して封印することが、大人になるということでは決してない。親と子、とりわけ母親と娘に観て欲しいとっても大切なことを教えてくれる素敵な映画でした。
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