えいがうるふ

ブルー・バイユーのえいがうるふのネタバレレビュー・内容・結末

ブルー・バイユー(2021年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

エンドロールに流れる映像が示唆するように、この作品のメインテーマは幼少時に米国で養子縁組を組んだものの、知らぬ間に市民権の無い不法滞在者となってしまった人々の苦境を訴える、というあたりなのだろう。その点でこの作品が作られ世に出た意義は大いにあると思うし、制作陣の熱意と努力には素直に敬意の念を抱いた。

しかしながら、その主題を伝えるにはあまりにもストーリーテリングが下手というか、雑味が多すぎて個人的にはスッキリしない話になっていたのがなんとも残念だった。

社会の不条理を告発し心情に訴える感動作にしたいならば、その過酷な運命に負けずに真っ当に生きようと奮闘する主人公であればこそ応援したくもなるというもの。例えばケン・ローチ作品のように。
なのにこの主人公ときたら顔こそ純朴そうに見えるものの、親になっても結局やることがいちいち短絡的で褒められたものではない。
夕暮れの川べり?で親子3人仲睦まじく過ごす様子はそこだけ見れば確かに微笑ましく美しいシーンだが、もっと根本的な親として子供を守り育てる覚悟や責任が欠如しているように思える主人公の言動の幼稚さにがっかりするばかり。
生き延びるのに精一杯でそのように育つしかなかった彼らの境遇はもちろん気の毒だとは思うが、今作の主人公はその苦境に流され成長できないままなし崩しに親になってしまった残念感が前面に出過ぎていて、テーマとずれたところで考えさせられてしまった。

そのうえ、元夫の警官が突然善人に変貌したりその同僚がいきなり凶悪犯罪をしでかす極悪人に豹変するのも唐突で、展開に納得感がない。

間違いなく、一番可哀想なのはそんな養父ばかりかその男に惚れこんだ母親にまで振り回されて心を何度も傷つけられる幼いジェシーだ。
だからといって最後にとってつけたようにその不憫な子が泣き叫ぶお涙頂戴シーンを持ってこられても、
「そりゃその歳で訳も分からず愛着対象から引き離されれば号泣するでしょうけど、情にほだされてその男についてったら後で絶対後悔するし!!子どもよりも自分たちの感情優先の親に振り回されて無駄に辛い思いさせられて本当に可哀想・・・」としか思えず、なんとも虚無感が残るエンディングだった。

家族としてお互いを本当に大事に思うからこそ「全滅を回避」するために分かれるという冷静な判断をし、後悔しなかったベトナム人一家を見習わんかーい!

提起されたメインテーマの着眼点はもとより、キャスティングと演技(特に子役は天才!)と撮影はいずれもとても素晴らしかっただけに残念。