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ブルー・バイユーのmaverickのレビュー・感想・評価

ブルー・バイユー(2021年製作の映画)
3.8
2021年のアメリカ映画。監督・脚本・主演は『トワイライト』シリーズのジャスティン・チョン。共演は『リリーのすべて』のアリシア・ヴィキャンデル。


アメリカにおける、国際的な養子縁組の厳しい現実を基に描かれた物語。過去のずさんな制度が改定となり、そのせいで海外に養子にもらわれて育った子供がのちに国外追放になるという問題が起きている。その子供はずっとアメリカで育ったのに、正当な市民権を取得していないという理由で国を追われるとんでもない話。現在のアメリカの基準に照らし合わせる必要性も分かる。だが養子縁組された子供には何の罪もないわけで、本作のような物語として見せられれば当事者の苦しみもより分かるというものだ。ジャスティン・チョンは韓国系アメリカ人であり、こうした現実を広く知らしめるべく本作を企画したそうだ。

この問題を知ることが出来て良かった。本作が元でこのことを知る人が大勢いるだろう。この問題点が改善されることを切に願う。夢や希望を持って幸せに生きることを望んでも、それを阻まれる人がいる。主人公は基本的には優しい人物であるが、選択肢の少なさから人生の奈落へとどんどん落ちてゆく。アメリカになぜ暴力や犯罪が蔓延るのか、それが理解出来るような話でもある。アメリカにおける問題点を本作は見事にあぶり出している。

テーマとしては非常に優れている。だが映画としては粗さがあった。悲劇的な出来事の描き方にあざとさを感じてしまう。悲劇性を際立たせるためのキャラクターの配置も同様。そのせいで物語としては自分的にはあまり刺さらなかった。幻想的な描写の差し込みも違和感が大きい。意図したいことは分かるけどそれが上手くいっていない。ジャスティン・チョンは俳優としては良い演技を披露していたが、監督としては今一歩という印象だった。

妻役のアリシア・ヴィキャンデルだが、オーラを消しての自然体な演技が素晴らしかった。主人公が知り合うベトナム人女性を演じたリン・ダン・ファンの熱演も同様に素晴らしい。この人、セザール賞も受賞している凄い女優なんだね。存在感が半端なかった。子役の女の子も上手かったし、良い役者が作品に深みを与えていた点は評価したい。


作品の粗さが目立ち、期待していたほどの感動には繋がらなくて残念。でも本作の意義はしっかりと響く。考えさせられる問題だ。鑑賞して良かった。
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