のら

猿の惑星:創世記(ジェネシス)ののらのレビュー・感想・評価

4.0
1968年公開の猿の惑星の前日譚にあたる映画。しかし実はオリジナルの猿の惑星の前日譚は "新・猿の惑星" 以降の三作ですでにやっている。では本作はリメイクなのか?と言うとそうではなく、より現代的な解釈に基づいたリブート作品になっている。

というのもオリジナル版の猿の惑星シリーズはチャールトン・ヘストン主演の前半は冷戦下特有の対立構造をベースにした破局的終末とイデオロギーを、そして後半は主にアフリカ系アメリカ人の公民権運動をテーマに扱っている。

つまりオリジナル版はテーマ的に切実さの欠けた内容になっている。そこで本作は原作やティム・バートン版と同じように人種間対立、特に支配される側の話に置き換えられている。

そのため今回の創世記は文明批判的な内容ではなく、支配される側の脱出劇として見応えがある。特に猿たちがゴールデンゲートブリッジを突破するシーンなんかは十戒でエジプト軍に追走されたモーゼ率いるイスラエル人が紅海を渡るシーンを彷彿させる名シーンに仕上がっている。本作の特徴としてイスラエル人のエジプト脱出のモチーフが多用されている点が挙げられる。この描写は徹底されていて、囚われたシーザーが理想郷としてみる島の山の形はシナイ山を連想させるようなデザインに意図的にされていたりと、創世記というよりも出エジプト記という副題の方が適切なのでは?と思える。

その一方でシーザーが施設に囚われるまでの前半パートが、若干テンポが悪いのと、シーザーの反乱の動機が人類への復讐なのか、仲間の猿達を守るために立ち上がったのかが若干分かりづらい為に感情移入しづらい。

とはいえ単体作品としての完成度の高さ非常に高く、その上でオリジナル作へのつながりを匂わしているのは上手い。また前述のゴールデン・ゲート・ブリッジのシーンはスペクタクルで、近年見る事が少なくなった正統派の英雄譚として非常に良い作品にしあがっている。
のら

のら