こうん

ブレードランナー ファイナル・カットのこうんのレビュー・感想・評価

4.5
20190725追記:
RIPルトガー・ハウアーさん、ヴァーホーヴェンとのコンビ作を思い浮かべもするけど、やはりこの映画での気高く恐ろしく美しいハウアーさんがいつも瞼の裏にいます。
IMAX上映が追悼になってしまうけど、楽しみなレーザーIMAX処女は貴方にささげます!







平静は「ボク映画のこと詳しいヒトなのなの」という顔で映画館を闊歩しておりますが、「ブレラン」観たことないです白状します。

いや、観たことあるんだけどぜーんぜん記憶がなくて。(屋台のおっさんが三木のり平に似ているのだけ覚えていた)
なんかバージョンがいっぱいあって、どれを観たらよいのか?なんて会話は「ブレラン」マニアの間では楽しい話題なんでしょうけど、蚊帳の外の人にとっては「え、なに、どれ観たらいいのかわかんなーい」と誰か教えてくれるのを待っているばかりだと思うんです。
で、誰も教えてくれないし聞かないし、結局観てない、観ない。

そんで新作「2049」が間もなく公開されるので、なんとなく焦ってきた折に素晴らしき映画館、丸の内ピカデリーさまの企画、”爆音映画祭”にてブレランがかかると知りまして。
「ファイナル・カット」というのがどういうバージョンなのかよくわからないけど「観ないと死ぬ!」と思って観てきました。

SF映画の金字塔であり、「あの映画ブレランごっこしてるね」などと揶揄の引き合いに出されるほど著名なリドリー・スコット翁の代表作です。
ま、さっきブレラン処女捨ててきた身なんで偉そうなことを書き立てることはしませんが、普通に面白かったです。
2017年の感覚とか技術とかデザイン洗練度とか与しなくても、楽しかった!
それにでかいスクリーンと重低音アゲアゲで観れたことでより堪能したと思う。

あの、2019年LAの圧倒的なビジュアルね!
色んな映画でいっぱい観たことあるぅ!……公開当時に見た人が羨ましい…どんだけ新鮮だったんだろうな。
そのビジュアルショックというのをもう味わうことのできない哀しい身の上、という前提での感想です。
(それにしても採光の悪い部屋ばかりで登場人物たちの眼が悪くならないだろうかと心配しました)

いや、後追いも後追いの僕でもそのビジュアルは楽しかった。
酸性雨が降りしきる荒廃したロサンゼルス。
オリエンタルなテイストに満ちていて、日本由来のアレコレが散見されるのも”エコノミック・アニマル”時代を先取りしています。
街を歩いている人たちにもアジア人が多いし、チャイナタウン化=スラム化の感じは今観ても、なんだか重苦しい気持ちになってきますね。
圧倒的なビジュアルが、この映画に漂う感情を形作っているといえます。

そう、この映画の骨子はハードボイルドだと思うのです。チャンドラーとかハメットとかの系譜。
主人公が情が深くて頭は切れるけどよくボコボコにされる、というのもハードボイルドの定理に叶っています。
そして僕的にハードボイルドがハードボイルドである必須条件は、街がもう一つの主人公であること。

僕の知っているハードボイルド小説はどれも、的確で濃厚な街の描写や雰囲気なしには成立しないものになっていて、そういう伝でいうと「ブレラン」もハードボイルドの伝統にのっとっていますね。
そういう意味においても、この力の入りまくった圧倒的な近未来ビジュアルは、映画の貌といって差し支えないくらい。
逆に主人公のハリソン・フォードがちょっと魅力に乏しいくらい。

ま、実際にリドスコはフォードの演出よりも美術にご執心で、雰囲気良くなかったとか。

しかしレプリカントの魅力的なことね!
レーゾンデートルを求めて、様々な行動や表情を見せるレプリカントたち。
なぜ生まれたのか、どこに行くのか、わたしは何者なのか。
特にルトガー・ハウアーの恐ろしさと気高さが表裏一体となった、迸る色気。
そしてショーン・ヤングの不安げな眼差しに宿る、刹那。

この2つで僕はもうお腹いっぱいでした。
特に髪を下した時のショーン・ヤングの美しさね!美しい!

それから今回初めて気づいたけど、リドスコ翁の製作プロダクション”スコットフリー”のあのロゴマークは本作のルトガー・ハウアーの解き放つハトが由来だったのですね。
なるほど、確かにFREEの象徴でした。

ほぼ初めて観る「ブレードランナー」は確かにSF映画の金字塔的なカルト映画で、デッカードがレプリカント説(もはや定説?)も含めて、非常に含みというか、形而上学的な奥行きのある優れた映画であると思いました。
面白いかどうか、そこはカルトたる所以だけど、僕はめちゃくちゃ面白かったです。ブルーレイ借りて帰りましたもの(しかも同じバージョン)。
ヴァンゲリスのエンディング曲もたまらなくいいしなぁ。

あのあとデッカードとレーチェルはどうなったのだろうか。

確かなのは「ブレードランナー2049」がめちゃ楽しみになったということです!
爆音上映観てよかった!
(2300円もしたけど)
こうん

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