菩薩

ブレードランナー ファイナル・カットの菩薩のレビュー・感想・評価

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我思うだけで我がいられたらいいのだけど、結局はそんな我を思ってくれる他者がいてこそはじめて己と言うものが存在するわけであって、人間性も認められず、喜怒哀楽の感情も希薄になり、ただただ無駄に浪費されるだけの日々を過ごしている身としては、あんな風にして電池が切れるように天寿を全うし事切れるルトガー・ハウアーに対しては、もはや羨ましさすら感じてしまう。彼はきっとレプリカントとしては失格だったのだろうが、ニンゲンとしては合格だったのではないか。ニンゲンと機械、ニンゲンと人形、その差が例えば感情なのだとしたらの話だが、いやもはや魂と呼ぶべきなのだろうか、ガフの部屋が空っぽのままの自分は、とうにニンゲンとしては失格の烙印を押されているのだと思う。生への渇望と死への恐怖、そのどちらもが逆転してしまっている今は、ただいつまで続くとも知れぬ毎日が怖い。
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