NAOKI

ブレードランナー ファイナル・カットのNAOKIのレビュー・感想・評価

4.0
ふと目を覚ますと…
自分は何かカプセルのような容器の中に寝ているのだった…
そこは広大な空間で自分が寝ていたのと同じようなカプセルが見渡す限り無数に続いている。
頭に手をやると何かコードのようなものがカプセルと自分を繋いでいるのがわかる。
ここはいったい何でおれはいったい誰だ?

先日「トータル・リコール」のレビューをあげたとき原作者のフィリップ・K・ディックが生涯追い続けたテーマに触れた…

「この現実は果たして本物なのか?自分達が信じている記憶は植え付けられた偽物なのではないか?」
私たちの存在自体が根本からぐらつくような「ディックっぽい」あの感覚…

この「ディックっぽい」感覚は彼の作品のみならず、世界中で見られる。

日本では例えば「攻殻機動隊」…草薙素子は自分の電脳のゴーストが果たして本当に自分のものなのかを疑う…自分などそもそも存在せず誰かが作ったものかもしれない…

中国には戦国の宗の時代に「胡蝶の夢」という話がある。道教の始祖・荘子はある日蝶になってヒラヒラと翔ぶ夢を見る。しかし目覚めたこの自分の人生こそ蝶が見ている夢かもしれない…という話だ。

ディックの代表作でもある「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を映画化した「ブレードランナー」
諸々の理由からいくつかのバージョンが知られているがどのバージョンにも描かれない象徴的シーンが原作にはある。 

それは主人公のデッカード自信がレプリカントを判別するテストを自分に対してやる…というシーンだ。
デッカードは事件を追う内に自分も記憶を植え付けられたレプリカントではないか?と疑い出すのだ。

このシーンは映画にはないが、この疑いは映画の各所で謎めいたシーンとして描かれ、デッカードは実はレプリカントではないか?という議論が今でもファンの間で続いている。

おれは若い頃からずっとこの「ディックっぽい」感覚がたまらなく好きで未だにこの感覚を味わいたくて彼の映像作品をよく観てるわけです。

ディックではありませんが「マトリックス」もこれににたバーチャル世界が出てきますよね…この映画のキャスティングの際、多くの俳優が「現実が夢の世界で本当は寝てるんでしょ?そんな主人公演じる自信ないなぁ」と尻込みする中で…
「わかる!おれはずっと前からこの世界は偽物じゃないかと思ってたんです!」と目を光らせてプロデューサーの目に留まった若い俳優がいた。
彼の名はキアヌ・リーヴス…

彼もまた「ディックっぽい」世界観に魅せられた男だったようです。

最後にデッカードの部屋の前に置かれていたガフの折り紙は…ユニコーンでしたよね…

ユニコーン…

どうします?…もしあなたがふと目覚めたら…コードに繋がれてカプセルに寝かされていたら?今の生活は全てそこで見ていた夢だったら?…

隣のカプセルでも目が覚めたらしい男が途方にくれたように周囲を見回してるのが見える…

それは…おれです
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