うめまつ

ブレードランナー ファイナル・カットのうめまつのレビュー・感想・評価

3.8
あぁどうしよう。あんまりグッと来なかった。見所を探している間に終わってしまった。身体中に数百本の鍼を刺されてるのにどれも奇跡的にツボじゃない。勝手にもっとエンタメ性の高い作品だと思い込んでいた事もあり、想像よりずっとまったりと話は進み、感情が揺れないままエスカレーター式にラストシーンに辿り着いてしまった。時は正しく2019年なのにブレードをランナー出来ず。撃沈。

視覚的見応えは言うに及ばず凄かった。雨に濡れて息衝くネオン、冷たくて排他的なスモーク、沈殿した夜の底のような街。でももっと早く観ておくべきだったんだろう。この作品と一緒に時代を並走した記憶が欲しい。完全な状態で生まれて死んでゆくレプリカントが、私にはただただ美しく羨ましい存在に映ってしまった。彼らの悲哀に共鳴するところまで辿り着けなかった。

虫も花も動物も機械も惑星も、形あるものは皆与えられた寿命を生きている事に変わりないのではないか。私は猫や犬が100年生きられない事を可哀想だとは思わないし、樹木が1000年生きられる事を狡いとは思わないし、家畜として飼われている牛や豚を美味しく頂きながら、人間の形をしたレプリカントにだけ同情するという事がどうしても出来ない。差別や奴隷制度には勿論反対だけど、ロイの容姿がもっと宇宙人然としていたらどうなったの?ルンバが感情を持ったら掃除だけさせてるのは奴隷扱いになっちゃうの??牛と話せる翻訳機が出来てストライキ起こされたらみんな食べないの???人間に限りなく近いから差別しちゃ駄目で、魚や草木は人間から遠いから好きにしていいの????何処からを生きているとみなして、何処までを意思があると捉えるの?????。。シコウガ、ショート、シマシタ。

見当違いをぶちまけている事は承知しているけど、こう感じてしまったので仕方ない。私もいつか創造主に会えるなら、この残念な脳について愚痴愚痴と文句を言いたい。まだまだこの作品の見方が判ってないので、私の中のハードボイルドが目覚めた頃に再チャレンジしてみようと思う。
うめまつ

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