かっつ

ブレードランナー ファイナル・カットのかっつのレビュー・感想・評価

4.0
◆シンギュラリティ: 技術的特異点(Technological Singularity)とは、人工知能自身の「自己フィードバックで改良、高度化した技術や知能」が、「人類に代わって文明の進歩の主役」になる時点の事である。

1960年台に「もしかしたら」で予測された2019年。液晶パネルが予想外に薄くなった(cf.スマホ普及)以外はあまり変わってないような気もする。決して地球が住めないほど汚染されるわけでもなく、惑星間輸送が身近になったわけでもない。しかし、予測されたような未来は確実に忍び寄ってくる。2045年。人類は技術的特異点を迎える見込みだ。産業革命、市民革命、明治維新から始まった「近代」から250年ぶりに世界史人類史が大きく変わる。近代とは、生産物革命であり、効率性を追求した時代であり、大量生産大量流通大量消費の時代だった。それらが全てAIに取って代わられる。

果たしてそれはどんな未来なのだろうか。我々が道を誤れば、アンドロイドが奴隷のように働き、自らの命を求めて反逆を起こす未来かもしれない。しかし、ルトガーハウアーが演じ切ったアンドロイドの強さと弱さ(優しさ)は、我々の未来を、ほんの少し明るく照らしているのではないだろうか。我々の心は、そして技術は、恐れるばかりではない、明るい未来を創ることができるのかもしれない。

さて、2019年。ルトガーハウアーの生涯に、そしてフィリップKディック・リドリースコットが描いた未来に思いを馳せよう。現実がいずれ迎える未来にワクワクする人もいるだろう、憂鬱になる人もいるだろう。しかし一つだけ確かなことは、こんな映画を作れるのは、少なくとも当分の間は人間だけだということだ。映画はやはり捨てたもんじゃない。こんなクリエイティブの塊のような作業は、そう簡単にはAIには奪われないはずだ。

さて、今の子どもたちはシンギュラリティが来た後の未来を生きる運命だ。子どもたちの基礎基盤をどう作るか、未来のために努力するのは、我々大人たちだ。

@TOHOなんば IMAX版にて
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