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最後の決闘裁判のazmのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
5.0
舞台は中世のフランス。騎士の妻であるマルグリットが夫の旧友に乱暴されたことを訴えるも目撃者や証拠がなく、裁決を神に委ねるために夫と旧友が命をかけた決闘を行うことになる……的なストーリー。

すごく面白くて魅入ってしまいました。それぞれの視点別・各章に分けられて話が進むんだけど、主観となる人物が違えば出来事の見え方や語るべき内容の選択が違ってきて、真実と(当人にとっての)都合のよい嘘が混在している。まさに芥川龍之介の『藪の中』。

当時の男性の誇りや虚栄心や権利云々、そして女性の立場の弱さと生きづらさが詰まってる作品。あと甲冑を着た決闘シーンすごかったな……。ドキドキしちゃった。

キャラクターはどの男も傲慢で男尊女卑の塊というか、妻は人間ではなく「夫の所有物」であり、女性は乱暴をされても口を噤むしかない。マルグリットは黙らないという選択をしたけど、夫の母親が言っていたように当時は女性が虐げられることが珍しくなかったんだろうな……。

裁判でのやりとりがセカンドレイプで見ててつらい。あと快楽を覚えないと妊娠しない=強姦では妊娠しないというのが科学的に認められてるっていうのが怖すぎた。

怖いといえばね、ル・グリ(アダム・ドライバー)の「逃げれば追うだけだ」は本当に怖い。大柄で力持ちの男に追われたら絶対に逃げられないという恐怖すごかった。
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