フクイヒロシ

最後の決闘裁判のフクイヒロシのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
『羅生門』(1950)では同じ事件を四人が証言するんですが、語る人によって事件の内容が全然違う。

事件の捉え方が違うとか、見る人によって解釈が違うっていうレベルではなく、明らかに複数人がウソをついている。

で結局真実は〝藪の中〟です…っていう話。


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なので
この『最後の決闘裁判』を『羅生門』っぽいって言っちゃうと
まるで「結局真実はわからないけどね…」ってことになっちゃうので、危険。

この映画では
性暴力が行われたのは両者にとってTRUE。
(ただ加害男性が自分に都合のいいように解釈をし始めただけ)


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この映画の特徴は『羅生門』っぽいとこではなく、
〝現代の状況と置き換え可能であること〟だと思います。

性被害に遭ったなんて一族の恥!と被害女性の方が非難されるとか
「夫のために沈黙すべき」って言われるとか

「抵抗できたはず」とか「事件前にルックスが良いって言ってた」とか

夫が妻を気遣うんじゃなくて自分のメンツを気にしてるとか

妊娠について非科学的な迷信が押しつけられるとか。

600年前の事件だけど、今もそのままピッタリな点が多すぎる。
こここそがこの映画のポイントでしょう。


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題材がデリケートなものなのでちょっと脚本がおっかなびっくりになってる感じがありますかね。

「間違ったメッセージが伝わらないように」と丁寧すぎてくどい感じだったかなぁ。

それが、153分っていう長さにもつながっていたかと。


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美術や衣装やヘアスタイル(とくにマグリットの!)が素晴らしくて
中世のフランスでは本当にこういう生活だったんだろうなとロマンが膨らんだし、

騎馬戦のアクションもかっこよくて残虐でハラハラ楽しいんだけど、、

いかんせん話が地獄すぎるし
性犯罪が起きた後の周りの対応がクソ過ぎて、、観てるのが辛い。。

それは「現代も同じだよね」ってことなのは重々承知しておりますが。。



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この難しい題材をリドリー・スコットだからここまでのレベルに仕上げられた、のか。

リドリー・スコットでもさすがにこの題材は難しかった、のか。