くまねこ

LAMB/ラムのくまねこのレビュー・感想・評価

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.7
「LAMB/ラム」(2021年、アイスランド)を丸の内ピカデリー2で鑑賞。静かながら衝撃的な寓話だった。今年のベスト級になるかも。

山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。羊の出産に立ち会ったところ、羊ではない何かが産まれてくる。彼らは子供を”アダ”と名付け、幸せな日々を過ごすのだが…

クリスマス前夜の出産、夫婦の名前から“キリスト生誕”のモチーフを北欧神話、ギリシャ神話の要素を交えたファンタジーと考えてたが、これはブラックコメディスリラーと考えるのが妥当かも。

作品全体に漂うダークな不穏感。閉ざされた山岳地帯の風景、曇天な白夜、何が起こるか分からない気味の悪さが不安を煽ってくる。

頭が仔羊、身体が人間のアダちゃんの佇まい、子供らしい仕草がとても可愛らしく癒されるが、同時に圧倒的な違和感と畏怖にも似た恐怖を感じた。

どうやら以前に娘を亡くしていたらしく、アダちゃんを自分たちの子として育てようとする気持ちも理解できなくはない。

アダちゃんを取り戻そうと忍び寄る母羊をマリアが銃殺してから異変を察知するボーダーコリー犬、猫たちの表情のカットも不安を煽る。その後の動物たちの凄惨な死の映像は地味にキツかった…。

夫婦に降りかかるあの結末はやはり衝撃的。仔羊を横取りして育てようとした夫婦への復讐と捉えるものか?他人の幸福を奪おうとした因果応報なのか?

アイスランドの神々しい山々の美しさ、荒涼とした岩肌と大地の映像を丸の内ピカデリーの大画面で観れたのは小さな収穫だった。
くまねこ

くまねこ