ムーラーのドキュメンタリー『我ら山人たち』で唐突に挟み込まれる山の不穏な話を思い出した。
人間の皮を着た人間ではない”何か”が山には居るという。時に人を攫い惨殺する。山から降りるとき後ろを振り返ってはいけない。それと目が合ってしまうから。
これホラーなんだろうか。雄大な自然の中で台詞少なに描かれる傷ついた夫婦の物語だった。超自然的なことも起こるけど、まあ山ならそんなこともあるだろう。ジャンルなんて第三者が勝手にあてがうものだけど、僕は山を舞台にしたホームドラマだと思いました。
始まり方『サタンタンゴ』みたいだなとか台詞の少なさと横移動するカメラの多用とかも含めてタル・ベーラみを随所に感じていたら、なんとクレジットのエグゼクティブプロデューサーにまさにタル・ベーラその人の名前が!ほらな!笑
脚本のショーンってひつじのショーンかな?笑 ロバート・エガースの『ノースマン』の脚本にも入ってる。
北欧の映画だし音楽はヒドゥル・グドナドッティルだったりしないのかなと思ったけど、Þórarinn Guðnasonという人だった。が、やはりヨハン・ヨハンソン門下の人っぽい。グドナドッティル作曲の『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』『ジョーカー』の音楽にも参加してる。
ノオミ・ラパスって稀有な人よね。今や国際的スターだけど、こういう映画でこういう役ができて、ちゃんと現地の言葉を話せるって他にいないだろうなあ。もちろん現地には沢山俳優はいるだろうけど、世界配給の時に顔が効くっていうのは。
好きでした。かなり好きだったけど、強いて言えば見せすぎ?異形の者たちを。アダちゃん可愛いんだもん普通に。でもラストのあの表情を考えると、監督は意図してそうしたかったんだろうけど。でもアダちゃんの葛藤はいいかなー。夫婦をメインとして考えると余計かなー。もっと人間をちっぽけな存在として冷たく突き放してくれても良かった。そしたらもうちょっとホラーに近づくんだろうけど、たぶん監督はあくまでそうはしたくなかったんだろう。
でもハッキリ見せるには、、特殊効果がやや気になる。CGは使わず意地でも着ぐるみ的な特撮スタイルで貫いた方がむしろ不気味さは増したかもしれない。
【一番好きなシーン】
”何か”目線の冒頭。全体的に動物演出うますぎる。