ガラムマサラ

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲のガラムマサラのレビュー・感想・評価

4.0
クレヨンしんちゃん映画屈指の名作。

頼りになる大人たちにもあった、楽しかった子どもの日々。
もし戻れるとしたら……。

平成最後なので、鑑賞。

誰もが思う「あの頃は楽しかった」「あの時代に戻れたなら」
仕事に抑圧されて、日々を無気力に生きる人々にとっては思い出こそが現実逃避なのでしょうか。

そういった今を生きられなくなった大人たちの逃げ場が作られたら、そっちに心惹かれる人は、きっと本当にこの作品の大人たちのようにほとんどが心を掴まれるでしょう。

作中では大人たちが子どものように遊び、我儘を良い、はしゃぎます。
でも完全に子どもになったわけではなく、仕事のことを認識し、車も運転できる。そしてしんのすけたちのことを「ガキども」とまるで自分たちはガキじゃないかのように言うんですよね。

完全に子どもに退行したわけじゃなく、正しくは「子ども心を思い出した」ということなのでしょう。それも強烈に。

それに対して、今を生きる子どもたちは懐かしむ過去が無いので未来を見据える。闇雲に未来を掴み取ろうとしんのすけが東京タワーを駆け上るシーンは名シーンですよね。

印象的なのは黒幕のケンとチャコ。
特に首謀者であるケンは中盤以降しんのすけたち野原一家を何が何でも止めようとはしません。
彼はきっと進めなくなった人なのでしょう。でも人類を滅ぼすとか富や名声が目当てではなく、ただ自分の居場所が欲しかった。なので今と未来に居場所を見出す野原一家の気持ちも理解できたのではないでしょうか。


個人的に一番心に残るセリフが、ひろしが涙ながらに警官に叫ぶ「懐かしくて頭おかしくなりそうなんだよ!!」という言葉。

自分もまだまだ若いですが、地元に帰ったり、ふと見つけた昔の写真を観たりすると今と昔をどうしても比較してしまうというか、心に浮かんだ懐かしい情景に思いを巡らせ、現実の辛さだけが浮き彫りになってしまうというか、確かに心地よいその懐かしい記憶に身を委ねたくなってしまいますね……………今も確かに楽しいはずなのに。