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スープとイデオロギーのmmmのレビュー・感想・評価

スープとイデオロギー(2021年製作の映画)
4.0
朝鮮総連の熱心な活動家だった両親。
3人の息子を「帰国事業」で北朝鮮へ送り、
夫の他界後も借金してまで仕送りを続けてきた母だったが、
自身も体調を崩してしまう。
そんな時、ふと口にしたのは、今まで語ったことのなかった
「済州4.3事件」のこと。
18歳の時の過酷な体験や大切な人との別れ…
半世紀以上前の記憶を語ったオモニは、
それからほどなくアルツハイマー病を発症する。

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「かぞくのくに」のヤン・ヨンヒ監督が実母の姿を
撮ったドキュメンタリー作品
タイトルが気になって鑑賞しました。

「済州4.3事件」は聞いたことがあったかな…程度
(日本の植民地時代から南北の分断に至る経緯を
ご存じない方はお調べください)

第二次世界大戦中の疎開先として渡った祖国で、
どれだけ悲惨の出来事があったのか
また、その記憶を抱えたまま生きることや思想の変化など
想像を絶することだったと思います。

娘である監督にも長らく話せずにいたくらいですがから、
正直、映画をみただけで理解できることではないし、
どう文字にしたらいいかも分かりません。

ただ、”結婚相手は朝鮮人でないと”と話していたこともある中、
日本人の婚約者を連れてきた時に、
オモニがせっせとつくっていた手の込んだスープ
その後、レシピを教えながら一緒にスープを作る姿や、
正装での結婚写真の撮影はとても嬉しかったのだろうと思います。

家中に家族の写真を飾り、今はもう傍にはいない
アボジや息子、親を想い続けるオモニ。

アルツハイマー病を発症してからは、その人達と供に
暮らしているようで、それは病気によるものだとしても、
辛い記憶がこぼれ落ち、理想とする姿を感じているのだとしたら
それってそんなに悪いことでもないのかもしれない。
もちろん、周りで支える人は大変だろうけど。

思想の違いや家族間でも理解しがたいことがあるかも
しれないけど、ともに料理をつくり食べることは
そういった隙間を埋めてくれるような大切な時間。

母親と娘(監督)と娘の旦那さん
ひと家族から、大きな歴史にふれることのできる作品でした。

政権が変わったことで、臨時パスポートをとり
事件の70周年式典にも家族そろって参加できたこと。
その光景も映されていますが、知らない国歌?(島歌?)を
懸命に歌う姿と、なんの罪もなく犠牲になった方の
お墓がびっしりと並んだ光景が印象的でした。

同じことを繰り返さないためにも、
知ることはやはり大切だと思います。

(※歴史にめっぽう弱いもので、記載内容に
事実誤認などありましたらお知らせいただければ幸いです。)
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