牛島彩

プリテンダーズの牛島彩のレビュー・感想・評価

プリテンダーズ(2021年製作の映画)
5.0
主題歌の『ghost』の「僕を乗っ取って。体はいらないから」と繰り返す歌詞の達観とは真逆で、映画の主人公はギラギラドロドロの過剰な自意識の呪縛に絡め取られて、誰からも認められず尊敬されない不満を、全世界を下に見るという最悪のハンドリングで誤魔化す生き方を選んだ、こじらせ引きこもりヤングケアラー。
彼女はまるで中学時代の私です。すべての家事を押し付けられ、褒められるどころか毎日殴られ、学校でもみすぼらしい自作のお弁当を笑われていた、あの頃の自分を見るようで、痛々しくてみっともなくて息苦しかったです。

どんな角度で受け止めてもザラザラしてイガイガしたヒロインの歪さに、ずっと抜けない棘を身体中に刺された気がします。しかしこの棘は、抜いちゃいけないんだと思います。

何をしたり顔で平然と生きてるフリしてんだ、私。
空気の読み方が分からなくて七転八倒してたくせに。
全方向に息ができないほど気を遣って生きてるつもりで、それが全部的外れで周りの人を傷つけ嫌われ続けてきたくせに。

そういう、過去のヤバい記憶がどんどん蘇って、心が紙やすりで削られるようにザラつきヒリつく作品でした。痛いけど、繰り返し観たい。何度も泣きながらヒロインを軽蔑し、かつての自分を罰し、また労いたい。
牛島彩

牛島彩