「愛を否定するな」
盲目な「愛」が持つ「キモさ」と「美しさ」の混ざり合いが描き出された、リアルで後ろめたくて愛おしい名作。
登場人物のそれぞれが恋をしているが、その恋する相手には他に恋する相手がいて、自分が恋する相手にとって自分は「どうでもいい」存在であるというもどかしさと残酷さ、行きどころのない「愛」のベクトルが交錯する見事な物語でした。
「どうでもいい存在」だからこそ、相手の好意を平気で利用したり、残酷なことを深く考えずに出来てしまう。そしてそれがまた相手を傷つけ、悩ませる。
普通ならドロドロして重苦しくなるテーマ、登場人物相関なのですが、今泉監督脚本ということもあり、会話がリアルで軽妙で面白くて、見ているうちに登場人物の全員が愛おしくなってしまうんですよね。
客観的に見るとどうしようもない「クズ」な人間ばかりなのに、それでも愛おしくなるし、それこそが「人間らしさ」なのだろうと思える。
そして城定監督の濡れ場演出は見事としか言いようがありませんでした。この物語の「リアルさ」を担保するためにはリアルな濡れ場、セックスシーンが必要不可欠だったと思います。
キャストの皆さんの素晴らしい演技、今泉味たっぷりの面白い脚本、城定監督のリアルな演出と「動き」のある画作りが混ざり合った良作だと思います。
2022/3/13鑑賞