第34回東京国際映画にて。
ああ!楽しかったー!
良い映画を観たー!といった印象。
悪い人は誰も出てこない。
だけど、あなたのその心遣いが、誰かの人生を縛り付けているのかもしれない。
主演ウドキア演じる元ヘアドレッサー パットの晩年を描く本作。
頑固者の人生最後を謳歌するコメディ映画、みたいなやつだったら嫌だなと思っていたが…『カールじいさんの空飛ぶ家』や『あなたの旅立ち綴ります』でも描ききれなかった人の持つ"意思"の強さを見事に表現してくれた。
それは時に残酷で悲しくもあるが、やはりその意思と周囲の環境との間に生まれるものは愛でしかなく、その生き様が可笑しくも愛おしくて堪らない。
私には認知症で孫の名前すらままならない祖母がいるが、きっと彼女にもまだ意思は残っているのだろうと、現実とリンクする描写も多く、私は孫の立場として視界がぼやけるシーンも多かった。
老いていくことの切なさと重厚感も完璧に演じ切ったウドキアに拍手を送りたい。
そして何より、娯楽映画としての完成度の高さに、今度は映画ファンとして別の涙がこぼれそうになった。
ぜひ日本での一般上映をお願いします!