生田斗真は長年の友人である尾上松也との約束を果たし、歌舞伎に初めて挑戦するーー。
伝統への挑戦。自分への挑戦。
舞台役者といえど伝統芸能の前では素人。
体験したことのない演技。
使ったことのない筋肉。
不可能を可能にするため自分の奥深くに眠る感覚すらも研ぎ澄まして全力で挑む姿は別人のようだった。
舞台の上の彼は何かが乗り憑ったかのように悠然と、そして圧倒的な華を持って観客を魅了していた。
生田斗真の役者魂も見事だったが、このドキュメンタリーのもうひとりの主役は尾上松也だ。
尊敬する父の十八番の赤胴鈴之助を新たな作品として残そうとする息子の松也。
歌舞伎の良さを現代の人にも楽しめる新作歌舞伎にして伝統芸能を守ろうとする歌舞伎役者の松也。
友人との長年の約束を果たそうと一から歌舞伎を教える青年の松也。
様々な挑戦を前に膨大なプレッシャーに向き合いながら作品を真摯に創り上げていく。
舞台人としての素の尾上松也の姿にも魅了されていく。
幾多の挑戦にも果敢に挑む二人の姿が丁寧に描かれた素晴らしい作品だった。
新作歌舞伎が作られていく裏側を堪能できる良質なドキュメンタリー。