マチルダ

女神の継承のマチルダのネタバレレビュー・内容・結末

女神の継承(2021年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

話題の呪詛に引き続き今期のホラー映画の中でもかなり期待していた今作ですが…!
いや〜これは劇場で観て本当に良かったです…好きなホラー映画5本指に入りました。
『信仰』とは何か、『信仰』は人を救うのか


タイは地域ごとの民間信仰が根強い国ですよね。日本も沢山の宗教が入り混じって民間信仰や土着信仰が渦巻いた闇鍋の様な国なので、こういうテーマは非日常感がある中にどこかすぐ側にこういう事が起きているのではないかという親近感が沸きます。キャスト陣もリアルというか…こういう人普通に“近所にいそうだよね感”がいい!
現地の生活感だったり作品に漂う独特の雰囲気も最高です。


最後のインタビュー。
ニムは事実、ちゃんと巫女として人々を救っていたり取り憑かれて暴れるミンを鎮めて見せたりと、きっと恐らく何らかの力は持っていたのでしょうに。最後の最後でその力(彼女でいえば女神バヤン)を信じきれていなかった故に悪霊達に取り殺されてしまったのかなと思いました。あの衝撃の告白をしてすすり泣きからのエンドロールは、『信仰』とは何なのかというテーマを強くぶつけられた秀逸なエンドでした。

そして本来女神バヤンの巫女としてその座を継承する筈であった姉ノイの狂乱シーン。やっとバヤンを感じられたという彼女の言葉。取り憑かれた娘ミンを前にしての「私の娘を返して」
これって本当にノイの言葉なんでしょうか、これが女神バヤンの本質だったりするんじゃないか…とも思ったり。実は前半のミンの体調不良は本当に巫女に選ばれた通過儀礼であり、また別の理由で別の悪霊達に憑かれてしまって、その身体(私の物)を返せ、というバヤンの本質のような言葉とも受け取れるし、はたまたどれだけ人を犠牲にしたとしても娘ミンを救おうとした母親の底にあった狂気じみた本性なのか…。怖



POV視点のモキュメンタリーだとは知らなかったのですが、撮り方が上手いのかストレスは感じませんでした。こういう作品の中でのカメラマンは皆撮ることに命を賭けていて本当に尊敬します…。臓物引きちぎられてもカメラを離さないその精神力。タフ過ぎる。

ミンの役者さんの演技があまりにも怖すぎて、本当に見てはいけない映像を見てしまっている感が凄かったです…。あの凶悪な顔、奇怪な動き、とても美人な方でしたが、どれ1つとっても一級品の怪演技力…。
女神の像の首を折るという罰当たりな表現、動物にも赤ちゃんにさえ容赦しないバイオレンス性、セクシャルなシーンも大体に盛り込む振り切り具合、エッジの効いた作品だなと思いました。日本ではこういう作品は作れないだろうな…


長々と書き連ねてしまいましたが、本当に楽しめました。恐ろしかったです。
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