【継承されるものとは】
原題は「The Medium(霊媒)」だが、邦題の方がしっくりくる。そして、皆んな大好きなR18+作品だ。
監督:バンジョン・ピサンタナクーン
脚本:バンジョン・ピサンタナクーン
原案:ナ・ホンジン
あらすじ
タイ東北部イサーン地方。古くからの精霊が未だ信仰され「バヤン」という女神の霊媒・媒体である祈祷師ニムに取材をする為にスタッフは訪れていたのだが…。
土着の信仰、民間や民族信仰というのは各国、各地域に分布している。映画「ミッドサマー」や「ウィッカーマン」がキリスト教以前の原始的なケルト信仰をモチーフにしているように。
そして、今作の舞台となるタイも仏教が入ってくるまでは、日本のミシャグジ信仰にも似た「精霊信仰(アニミズム)」だった。
“精霊信仰“
即ち、日本の八百万の神と同じ、全ての事象に魂や霊が宿ると信じる考え方。日本と似た信仰的概念を持つ国だからこそ、霊的に畏怖する“感覚"にも共通点が多くある。
そこに加わるのは「エクソシスト」のような悪魔祓い、「ノロイ」のような土着の信仰、「REC」のような撮影取材というPOV式モキュメンタリー、「哭声 コクソン」のような目を惹く祈祷師や異様な儀式、ドキュメンタリーのような取材カメラ、覗き見するような定点カメラ、迫り来る恐怖を映す手持ちカメラ。
使い古された手法ながらも既存の類似作を超える臨場感があり、タイ族に根付く古い精霊(ピー)信仰、風習や慣例、霊媒、依り代、祈祷、森に覆われた村、高温多湿な気候。それらの自然や文化と悪魔祓いを融合させ、長めの上映時間と比例するように少しずつ蝕まれていくさまを描く。
タイには「善行を行う・徳を積む」事を指す、“タンブン“という輪廻転生に基づく観念がある。
積んだ徳は現在だけでなく、“自分の後世“にも良い影響を与えると信じられている。ならば逆もまた、その事を念頭に置きながら視聴すれば、より一層今作を楽しめるだろう。
この類いや手法が嫌いな人には全くもって向かないが、好きな人、もしくはこの題材が好きだけど今までの類似作は子供騙しすぎてなあー、という人には特にオススメだ。
後半、描写が過剰、過激になるにつれ、現実感が薄れていくのが個人的には残念であるものの、私にとっては好きな要素の宝石箱だった。開けたーり閉めたーり、うふふー。
ホラー、とりわけ心霊、幽霊、怨念、呪いを主にした作品は、問題ハッキリ!謎も全て解明!の場合、その時点でもう怖くなくなってしまう。
“時に理由付けは足枷となる"
投げっぱなしは論外だが、「わからない」ものに対し「全てわかる」と、途端に現実味が無くなる。ワカラナイ事象の中に、断片的に“わかる“を散らす事で真実味や深み、恐怖心や忌まわしさが増していく。
そう、今作のように