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THE FIRST SLAM DUNKのnatsuoのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.6
「ROCKでSLAMなバスケ」

バスケは、小中やっていた。小学生(ミニバス).時代は区選抜にも選ばれ、中学時代は部長(キャプテン)を務めと、まあそれなりにしていた。プロの試合にも何度か足を運んだりしたのでバスケは好きだ。

本作は超超有名なバスケ漫画及びアニメ、SLAM DUNKの現代版リメイク。連載自体は1990〜96年だそうで、もう30年近く前になるみたい。アニメもその時期に放映していたそう。自分は生まれていないし、実は観たこともない。桜木花道、安西先生、「諦めたら試合終了」、「バスケがしたいです」くらいしか知らない浅はかな人だ。(黒子のバスケは一時期見ていたが、途中で飽きていた。)
30年前の超有名な本作をリメイクする、となってそりゃ批判が無いわけ無かろう。声優陣の一新や3DCGアニメのタッチなどかなり大批判を浴びていた気がする。まあそんなに言ってやんなよと思うが、正直自分も最初、あのタッチは好きになれなかった。他作品の名前を挙げてしまうが、すずめの戸締まりやワンピースといった鮮やかで美しいアニメーション映画が功績を上げる中、鮮やかさも美しさもない、どちらかというと漫画っぽい気もするしけど生々しい気もするような、割と独特なタッチ。大丈夫か?かなり観る層を選びそうな予感がした。
声優陣の一新に関しては、アニメシリーズ版を観たことないので自分は特に何もありません。

しかしいざ公開すると、大熱狂だったそう。至る所で面白い面白いと騒がれ、本Filmarksの評価も驚異の⭐︎4越え。同時期に公開されたアバター2を凌ぐ順位だそうで(正直それに関しては日本大丈夫か?とも思ったが)、おおやったんだなぁと思った。これはかなり期待できそうだと。

相変わらず自分は受験で公開時は逃してしまったので、遅れての参加。小中高生は500円で鑑賞できるという超太っ腹な学割企画を開催してくれたので、この機に鑑賞。500円のことを教えてくれて誘ってくれた友人に感謝。


まじで面白かった。いや、面白かったというより、かっこよかった。序盤はやっぱり作画への抵抗はあったが、そんなのどこかに吹っ飛ぶような展開とかっこよさ。むしろあのタッチが本作のかっこよさを底上げしていた。
序盤、沖縄でバスケをする2人の少年。本作の主人公宮城リョータとその兄ソータである。ゴムのバスケットボールがコンクリートの上を跳ねる音。このなんとも言えない心地よさがたまらない。1on1をしながら、ソータはリョータにアドバイスを出している。引くなよ、余裕を見せろよなどと。負け続きのリョータがノリノリになってきた時、ソータは友達と釣りに出かけてしまう。リョータはもう一度やろうと言って泣き出してしまうが、ソータは海に出てしまった。その時点で嫌な予感はプンプンで。その後ソータは事故で亡くなってしまったことが明らかに。実際、ソータはミニバスで大活躍のスター選手。また、父が亡くなった後、家族を守るキャプテンとして母を支えてきた優しくて心強い子だった。そんなソータが亡くなってしまい、母もリョータも彼の妹もショックが大きい様子。本作は、父も兄も亡き宮城家の家族ドラマも魅力の一つである。

そして始まるオープニング。これが半端なくかっこいい。The Birthdayの LOVE ROCKETSのイントロ、ベースがめちゃくちゃ痺れる。そこに駆けつけるドラム、ギター。少しレトロな感じもするゴリゴリのロックがえぐすぎる。終始鳥肌もの。そのOP曲をバックに、スタメン5人が続々と描かれていく。その5人が並んで歩く(自分はこのよくある構図をアルマゲドン行進と呼んでいる(詳しくはアルマゲドンをご鑑賞下さい))。うわぁ尋常じゃねえぞこのかっこよさ。別にバスケをしているわけでもアクションをしているわけでもない。ただ同じユニフォームを着た5人が歩いているだけなのにこんなにかっこいいなんて、これはやられた。もう最高だった。

高校インターハイの一戦、神奈川の湘北高校vs秋田の山王工業高校が、ジャンプボールから始まる。後々わかるのだが、湘北高はバスケ部出来たてレベルのアマチュアチーム。選手一人ひとりが弱いわけではないが、チームとしてのまとまりも実績も皆無に等しい。みんな知ってる桜木花道もど素人なわけで。対して山王工高は全国トップのチーム。インターハイ3連覇も記録したことがあるそう。そんな試合、どうすんねんと思うのだが、まあ黙って観ていろよと言わんばかりに試合が流れる。この時点でもめちゃくちゃかっこいい。決して作画がいいとは言えないし、黒子のバスケのように現実離れしたプレーがあるわけではない。なのにただただかっこいい。コート全体の俯瞰はあまりせず、選手を間近で描くことで彼らの鍛え上げられた肉体美が輝く。そして疾走感がすごいパス回しとドリブル。ダンク、レイアップ、スリーなど気持ちの良いシュート。バスケを実際にやっていたからこそわかる部分もあるだろうが、これには誰もがかっこいいと言わざるを得ないだろう。
そして音も素晴らしい。冒頭のコンクリートでバスケするのとはまた違った音。大きな体育館で鳴り響くボールとバッシュの音。加えて選手の荒い息遣いや指先にボールが触れ離れる音も。観戦席の歓声や応援、ベンチからの指示、審判の笛、全てリアルに聴こえてきて、まるでこの会場にいて試合を本当に観ているかのよう。映画の音大好き人なので何度も言うが、これは映画館でしか味わえない臨場感である。Dolbyでも公開していたらしく、そっちで観ればもっと良かったのかもと後悔。(駄洒落ではありません。)

その試合の途中途中で、回想や昔のエピソードが挿入されていくのが本作の流れ。最終的には湘北の5人それぞれのバックグラウンドがわかるので、みんなに愛着が湧くし応援したくなってしまう。特にリョータには感情移入せざるを得ない。みんな好きだが、リョータが一番好きだしかっこいいと思う。中学ではポイントガードをやっていた(あまりガチっと決まってはいなかったが)ので、ボール運びの大変さもスピードの大切さも身に沁みてわかる。バスケに対して、家族に対して、仲間に対して、色々な苦悩がありながらもバスケを続けてきた彼の気持ちが、とても伝わってくる。そして彼が、たった1試合、しかし大きな1試合を通して成長していく様に、心が震えた。試合だけではなく、過去の経験や人生も我々は垣間見るので、一層彼の成長が嬉しく思えるし彼のプレーには惚れ惚れしてしまう。
しかしみんな最高。湘北も山王も選手じゃ無い人もみんな最高。みんなそれぞれかっこいいし愛おしい。書き出すとキリがないので割愛するが、鑑賞後にみんなが好きになってしまうのは間違い無いだろう。声優陣もかなりいいぞ?バシッとハマってるしみなさんお上手。
先も述べたように、鮮やかでも美しくもないアニメであり、キャラクターも輝いて描かれているわけでは無い。むしろ目に光がないのは少々怖さも感じてしまうだろう。しかしそうではなく、個性と迫力で責めてきた。本作の魅力はそこにあると思う。試合を40分間ぶっ続けで描き、盛り上がりの波を右肩上がりにしていくのではなく、最高潮に達しそうな時に過去のエピソードを挟んでいる。なんとなく古臭い演出に感じたが、これはかなりのチャレンジだと思う。今パッと思いついたのは、ボヘミアンラプソディでのラストライブの途中途中に、クイーンメンバーのエピソードが挿入されるイメージ。かなり気持ち悪くてどうも盛り上がりに欠ける演出になると思う。しかし本作はそれを危険と知りながらやってみせた。実際それが効果的で的を射てると断言はできないが、かなり絶妙なバランスを生み出し斬新な映画に仕上がったと思う。この試みによって1キャラクター1キャラクターへの愛着が自然と生まれていく仕組みなのだと思う。どうも盛り上がりが冷めてしまう時があったのでこの演出が上手とは言い難いが、結局鑑賞後はキャラクターみんなが好きになっていたので、本作は試合のかっこよさよりキャラクターの魅力を推したのだと思った。もちろん、試合もバリバリかっこよかったが。

そしてもう一つ、劇伴が超ロック。オープニングに引き続き、劇伴もゴリゴリのロックである。これがかっこよすぎるんじゃ。もはや有名だが、10-FEETの第ゼロ感も完璧に決まっている。すごい。すごすぎる。ロックバンドのライブに来た感覚にもなった。

ラストスパートは激動すぎる。ネタバレになり得るので多くは書かないが、ひたすらかっこいい。映像と音響の演出も完璧。アニメ的というか非現実的な一面も無くは無いが、そんなのどうでもいい。それまでバックグラウンドを観てきて煮えに煮え切った彼らへの愛が、応援と祈りに変わって湘北を心から応援していた。映画鑑賞というより、バスケの試合を生観戦しているよう。まさに臨場感。こっそりガッツポーズもしたし少し声もあげてしまった。隣にいた友人もめちゃくちゃノリノリだった。気づいたら試合にのめり込んでいた。
あっという間だが、大満足。完全燃焼という言葉が似合う映画、否、試合だった。ストーリーや作画どうこうではなく、試合が、みんながとにかくかっこよかった。胸熱胸熱胸熱。マーヴェリック、RRRと肩を並べるレベルの胸熱具合。とにかく最高だった。


高校ではバスケを辞めてしまったが、またバスケをしたくなった。というよりバスケが観たくなった。BリーグとかNBAとか生で観られたらなぁ。
そして原作も読みたい。ぶっちゃけシリーズ初心者には説明不足な点も垣間見えたので、ちゃんと読んだ方が楽しめそう。せめてアニメでも見ようかな。

THE FIRST SLAM DUNK、バスケ経験者でもそうでない人でも原作既読でも未読でも、誰にでもおすすめできる。めちゃくちゃいい映画だった。劇場公開中に是非是非。
続編はやるのかな?楽しみにしています。
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