rage30

THE FIRST SLAM DUNKのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

『SLAM DUNK』の映画化作品。

まず驚かされたのは、2Dと3Dを融合させたビジュアルの部分。
井上雄彦の繊細な絵を3Dキャラクターで再現しているのも凄いし、試合シーンにおける臨場感のある描写も印象的。
選手目線でコートの風景を見れるので、本当に選手になった気分を味わえました。
バスケを扱った映像作品としては、最高峰と言ってもいいでしょうね。

物語的には、原作の最後の試合である山王戦と宮城リョータの過去が中心に語られます。
湘北で最もクールだった宮城に、こんなエモい過去があったとは意外だったし、原作にないエピソードなので新鮮に見ることが出来ました。
山王という巨大な敵に立ち向かう湘北の物語と並走するのに相応しいヘビーな話で、映画をより見応えのあるものにしてくれたと思います。

ただ、ちょっと気になったのは、終盤の泣かせ演出がクドく感じてしまった点。
突然、宮城が手紙を書き出したりと、如何にも泣かせにかかる演出が個人的には興醒めしてしまったなと。
好みの問題かもしれませんが、個人的にはサラっと描いてくれた方が素直に感動出来たかもしれません。

原作を知っている人間からすると、大なり小なり引っ掛かる部分はあると思いますが、それでも最終的には映画に引き込まれ、熱くなってしまうのは、やっぱり山王戦が面白いからなのでしょう。
格上の敵に20点の大差をつけられ、選手個人もそれぞれ弱点を突き付けられる絶望的な展開。
それでも試合を諦めず、選手1人1人が弱点を乗り越えて成長し、最後は大逆転を果たすと。
なんだか、絶対的な神(山王)と弱さを抱えた人間(湘北)の戦いを見ている様で、神話を見ているかの様な感覚すら覚えました。

1つの試合に、これだけの見せ場を詰め込んでいるのも凄まじく、作者である井上雄彦も、この試合に懸けるものが相当にあったのでしょうね。
実際、山王戦が『SLAM DANK』の最後の試合になったわけですし、選手生命を懸けて戦う桜木は、漫画家生命を懸けて戦う井上自身でもあったのかもしれません。

とにかくまぁ、原作のファンでなくとも、試合シーンは一見の価値があると思いますし、原作を知らなくても楽しめる内容にはなっています。
本作で初めて『SLAM DUNK』に触れる人も多いと思いますが、そういう人には是非原作も読んで欲しいなと。
映画では削られた名シーンもあるし、本当はもっとユーモアのある作品でもあるし、何より原作を知ってた方がより、この映画を楽しめる事でしょう。

流石に『SLAM DUNK』の続編を望むのは酷な気がしますが、井上雄彦による新たなアニメ映画だったり、本作で培った技術を流用した新たなアニメ映画の登場は期待したいところ。
本作の影響で、今まで映像化を諦めてた作品を映像化したり、漫画家自身が監督を努めるケースも増えてくるんじゃないかな?
そういう意味でも、日本のアニメ映画界にとって、エポックメイキングな作品になるのかもしれません。
rage30

rage30