KKY

余命10年のKKYのレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
3.7
今年、24歳になる息子がいる。彼が言った。
「お母さん、俺、ハタチまで生きとうと?」
〝二分の一成人式 二十歳の自分に手紙を書こう〟小学校からの宿題。
10歳、病院のベッドの上で未来を疑う彼に私は笑顔で答えた。
「あたりまえやん!なん言いよーと!」

だからこのタイプの映画は観ないようにしてきた。どんなにドラマティックでも美しくても死んでしまうから。

彼は言う。
「彼女はつくらんよ」
「結婚はせんよ」
「俺に孫は期待せんでよ。兄貴と姉貴がおるけんよかろ」
自分の未来に責任がもてないから。
だから、カズくんの手を振り解いた茉莉の気持ちは痛いほど分かる。

昨年23歳の6月に骨髄移植に踏み切った彼は今も身体を張って闘い続けている。
弱音を吐かず、苦しさを見せず、八つ当たりもせず、人を思いやれる息子を凄いと思うし誇りに思う。
私にできることは、彼の前では笑顔であり続けること。
難病指定とされた病気とともに生きていく彼の人生をずっと見てきた。これからも見てゆく。私の命が尽きるまで。

難病を抱え生きた証を遺した小坂流加さんの人生は、どうしても息子の人生と重なってしまう。

構えて観ているので、映画として素直に泣けない自分がいた。
「経験した人にしか分からんよ」
移植の前処置で抗がん剤処置をした息子が笑って言った。経験してない私は、安易に可哀想なんて思ってはいけない気がした。泣いてはいけない気がした。
自分には関係ないから泣けることってあるんだなぁと思った。

ノンフィクションに違いはないのだろうけど、茉莉自身も言っていたようにフィクションを多いに詰め込んだのだろうなと思いました。
「こんなだったらいいな。」と言う素敵な恋の物語。それでいいんだと思う。

愛する人と結婚し、子どもを授かり、家族として生きてゆく。叶うことのない未来を彼女がどれほど望み、どれほど自分の運命を悔やんだことだろう。
頬を伝いとめどなく流れる涙が、叶わぬまま一人旅立ってしまった茉莉を思ってなのか、まだチャンスはあるかも知れない息子を思ってなのか、私にはもう分からなくなっていた。

生きるって美しいことばかりじゃない。
ただ、病気だろうがなかろうが、運命に抗えないのなら、全ての人が美しく散る桜でありますようにと願う。
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