ハル奮闘篇

余命10年のハル奮闘篇のレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
4.5
< テン候補作 見逃し鑑賞その4 >
【 君と出会って、この世界が愛おしくなった 】

 見逃し鑑賞その4は、生きることの素晴らしさを描いた恋愛映画です。

【 物語 】

 数万人に一人という難病によって余命10年であると知った20歳の茉莉(まつり・小松菜奈)。生きることに執着しないよう、恋愛はしないと決めている。ある日、同窓会で和人(かずと・坂口健太郎)と再会する。和人は父親と絶縁し、東京に出てきたものの、生きる理由を見つけられずにいたが、茉莉に恋をしたことで彼に見える世界は変わっていく。その和人から想いを伝えられて、やがて茉莉の人生も変わっていく。 

【 ここが良かった 】

 以前よく使われた〝難病もの〟というフレーズを近頃はあまり目にしない気がします。大抵はその映画を揶揄する場合に使われた言葉で、僕自身、ちょっと抵抗がありました。

 主人公がどう生きたかを描いているんだからね。主人公が家族や恋人や友達とお互いにどう関わりあって生きたか、自分の好きなこととどう向き合って生きたか、を描いているんだから。

 劇中では「2012年」のテロップに始まって、「2013年」「2014年」というふうにパートが区切られています。1日1日、1年1年のエピソードを繋いで描いて「余命10年」は出来ています。 

 これはいい映画だと思う。主人公と周囲の人たちの、日々のリアルな心の動きを丁寧に掬い取って、言葉にして表情にあらわして、「今日楽しいと感じられることがどれだけ特別で幸せなことか」というテーマが観客に伝わるように作られています。

 役者たちがみんないい。恋人たちは小松菜奈と坂口健太郎。ふたりとも立派すぎず、うろたえたり泣き叫んだり。そこが人間くさくていいんだよねぇ。お互いのことを強くも弱くもする、これは紛れもない〝恋愛映画〟です。父は松重豊、母は原日出子、姉は黒木華。いい家族だなぁ。友達も、バイト先の店主も、医者もみんないい。 
 四季折々の美しい風景を捉えた撮影も見事です。桜の花が舞い上がるいくつかのシーンも。

 特に若い人に観てほしいな、と思います。そのねらいあっての主題歌RADWIMPSなんだろうし。オススメします。
 いやいや、オバさんにもオジさんにもオススメです(笑)
 生きているって素晴らしい。そう思いながら日々を過ごせたらいいな。


*レビューは以上です。以下は自分の記憶のため、印象に残った台詞(聴き取り)を記します。未鑑賞の方はどうぞご注意ください。
 ↓ ↓ ↓










○「私も頑張るからさ、もう死にたいなんて思わないでください」「…わかった」
○「とりあえずやれることからやってみようかなって」「いいと思う」
○「全部まつりちゃんのおかげです。ありがとう」
○「これからはオレがまつりちゃんを支えるから。そばにいてください」
○「これ以上カズ君といたら死ぬのが怖くなる」「オレはまつりちゃんが好きだよ」「カズ君はちゃんと生きてください」「やだよぉ」「わかったって言ってよ」「…わかった」「ありがとう」
○「いいんだよ、もっと泣いたり叫んだりわめいたり。お母さんが全部受け止めるから」
○「お姉ちゃんがお姉ちゃんで良かった」
○「まつりちゃん、頑張ったね。まつりちゃん、頑張ったね」
○「私、間違ってなかったよね。これで良かったんだよね」