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ばちらぬんのKUBOのレビュー・感想・評価

ばちらぬん(2021年製作の映画)
3.8
今日は、東京都写真美術館の映画特集「八重山諸島から照射する沖縄本土復帰50年の今」から『ばちらぬん』をトークイベント付き上映で鑑賞。

昨年2021年の「ぴあフィルムフェスティバル」でグランプリを獲ったという本作は、なんと全編セリフが与那国島の言葉「ドゥナンムヌイ」で語られる。もちろん字幕スーパーが付くのだが、この「ドゥナンムヌイ」は絶滅危惧言語。近い将来、誰も話す人が居なくなってしまうかもしれないのだ。

監督・主演を兼任する東盛あいかさんは、この生まれ故郷の言葉や島の文化・歴史などを残すために本作を制作したのだと言う。

作品は、島での「エイサー」や「雨乞いの踊り」などのドキュメンタリーパートと、制服の少女(あいかさん)が島の精霊(?)のような4人の男女と出会うファンタジーパートが交互に組み合わされて語られる。

その精霊(?)と出会うことで、制服の少女(あいかさん)は「ハジチ」と呼ばれる沖縄の入れ墨として、島の文化や歴史を受け継いでいく。

「ドゥナンムヌイ」だけで構成され、説明を極力廃した脚本と、原色を巧みに使った印象的なビジュアルとの対比がおもしろい。

まだ若いあいかさんが「ドゥナンムヌイ」を話すだけでも大変な練習が必要だったろうに、それだけでなく、他の登場人物が話す「ドゥナンムヌイ」も全てあいかさんが録音してヴォイスチェンジャーで声色を変えて演じていたということをパンフレットを読んで知り、さらに驚いた!

あいかさんの「島の言葉を守りたい」という強い気持ちが感じられて感動した。

私の第二の故郷「宮古島」の言葉「みゃーくふつ」も、同じ絶滅危惧言語だ。私の島の友人も「みゃーくふつ」を守るために取り組んでいる。だから、この作品には、大いなるシンパシーを感じるのだ。

上映後には、あいかさんと「みゃーくふつ」を研究されている友人の藤田ラウンド幸世先生のトークイベントが行われたが、与那国に限らず、宮古島を含めた多くの琉球の島言葉が絶滅に瀕していること、そしてその言葉を守っていくことがいかに大切か、たいへん貴重なお話を聞くことができた。

今日は「東盛あいか」さんという、新しい才能に出会えたことに感謝。これからのあいかさんの挑戦を応援していこう。


*ちなみに「ばちらぬん」は「忘れない」という意味。みゃーくふつでは「ばっしらいん」と言います。
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