わたP

海炭市叙景のわたPのレビュー・感想・評価

海炭市叙景(2010年製作の映画)
4.5
海炭市という函館をモチーフにした架空の都市の市井の人々の生活を短編的に描いている佐藤泰志原作の映画化です。

一昨年の僕の邦画ベストが「そこのみにて光り輝く」だったのですが、そこのみにても同じ原作者の函館を舞台にした話で、今年公開の山下敦弘監督の「オーバーフェンス」とともに函館三部作と言われているそうです。

原作ではもう少し多いようなのですが、この映画では5つのストーリーからなっていて
2人で慎ましく生活する兄妹。立ち退きに応じず動物たちと暮らす老婦人。家庭が冷えきってしまったプラネタリウム技師。親から継いだガス屋の若社長。浄水器のセールスマンとその父の路線バス運転手。となっています
短編で綴られるストーリーが群像劇のようにほんの少しだけからみ合っているのがとても自然で、そういう人々の連鎖や広がりを感じさせてくれます。

彼らの生活はけして上手くいくことはなく、むしろ大事なものを失ってしまったりする話ばかりで、生きていくことってこんなにしんどいことなのかよと思わされます。兄妹だったり猫だったり幸せな家庭だったり自分の理想だったり、そんな色んな物を喪失して、それでも生きていかなくてはならないって、本当にこの世は残酷なものなのです。
それでもこの映画からは猫が身重になって帰ってくるように、確かに生きていこうという決意が感じられて、それはポジティブなことがあるからとか、強い気持ちを持とうとかそういったことではなくて、それでも僕らはやっていくしかないんだ。という諦めの混じった感情なのかもしれません。
この映画やそこのみにてを見て思ったんですけど、僕が住んでいる街と函館市の田舎度というか都会度というかそういう具合が似ていて、これくらいの都市だからこその行き詰まりというか閉塞感というか中途半端さが、そういったことを助長させてると感じました。

僕は良い人が良いことをする話だとか、凄い努力をして凄い。といった話があまり好きではなくて、そうよりかはそうしたくても頑張れない人々の話が好きで、そりゃあ頑張れるやつはいいよな!出来るんだからさ。でもそのほうが良いってわかってても自分の弱さに勝てない人間もいるんだよ。でもそれは自分が悪いっていうのもわかってるから、誰も責めることが出来なくて余計に辛いんだよ。そしてそれをわかってほしいとか認めて欲しいとか許して欲しいとか言うつもりは毛頭なくて、そういう人もいるっていうことを知ってほしいだけなんですよ。うわ、こういうこと書いてると指が止まらなくなる。

そしてこの映画も、まさしくそういった人々を許して欲しいとか認めて欲しいというわけではないように感じて、ただこうして生きている人達がいるよ。というのを教えてくれるように思いました。だからこそ、こういう人達が生きていくように、自分もしんどいことしかない世界で生きていこうって思えたのかもしれない。


なんかまじめになったので映画の中で思ったこと雑記しますね。とりあえず、僕も美人の同級生と不倫して「ホテル行こうね」とか言われたいです。何を言っているんだ。
あとあの加瀬ちゃんのグーパンチよかったなあ。
猫の名前がグレ子っていうの、サム・グレコから取ってるのかなあとか。
最後の路面電車の線路渡った兄妹のお兄ちゃんの姿だけが一瞬消えるのなんかも予兆としてうまいなあと思ったり。

熊切監督作品は初めてなんですが(鬼畜大宴会とかも超興味ある)これは好きだぞ。また1人注目しなきゃいけない人が増えたぞ。
函館三部作を撮る三人はそれぞれ大阪芸術大学の卒業生で、呉監督と山下監督は確か同期だったと思います。後輩には石井裕也もいるし、この辺の世代は凄いですね。
あ、ちなみにうちの父も大阪芸大卒で、奥さんの妹もです。あと元カノもです。だからなんなんだよ。まあなので大阪芸大に妙なシンパシーを感じるっていう話ですよ悪いかよ。

いまのところ、函館三部作最高なので、オーバーフェンスもめちゃくちゃ楽しみです。イメージだけど他の2作に比べたらポップで、苦役列車みたいな感じになるのかなあ。でも松田翔太あんま好きじゃないんだよなあ。