おさかなはフィッシュ

海炭市叙景のおさかなはフィッシュのレビュー・感想・評価

海炭市叙景(2010年製作の映画)
3.5
薄暗い曇り空、土の混じった雪。
およそ映画向きではない風景に、やっと幾ばくか映画らしい竹原ピストルの作り笑顔。
普段であれば人は、北国に住む人間はこんな笑い方はしない。相手に腹を探らせる暇があるなら、自分の畑でも耕していた方がよほど有意義だ。
その中で兄は笑い、妹はそれを受け入れる。他にできることはなかったのか、いや「そうすることができた」。
たとえスクリーンに映えづらくとも、誰だってそれぞれに命懸けで生きているものだ。

この土地に一発逆転のドラマは似合わない。
雪をかかなければ外にも出られず、せっかく出た車も雪道にはまり身動きが取れなくなる。
目の前の状況に向き合い、忍耐強く手をつけていくほかない。

猫の妊娠はさほど喜ばしいことでもなく、自然の成り行きに従ったまでだ。
それでも猫は帰ってきて、思わずゆっくりと撫で続けていたくなるほどにその腹は温かい。



北海道の海が見たくなって鑑賞。
近頃、会社の休憩時間によく「ナイロンの糸」を聴いていて、帰りたいというよりは、ひとときそこにいさせて、まさに「この海に帰った振りしてもいいだろう」ということを思っていた。
そうすると東京から来た営業マンが出てきて苦笑。
たまには海で休むのもいいとして、どこにいるにしても地に足をつけて働いていきたい。