群像の、いわゆるメリーゴーランド方式。
一つの街で、各々に生き、すれ違う。
それぞれの実存にとっての街が、その街である。
原作者が描いた故郷は、両親がかつて見た街であり、兄妹が見た街であり、作者の見た街であった。
以上、形式が面白い。
描写としては、手が登場人物に生々しい命を吹き込む効果としてうまいのと、
初めの兄妹は自己完結的に美しく、特に兄の怒鳴り声、笑顔がもう忘れられない。粗いフィルム映像も時間軸の深みを作品に与える。
全体を通して、面白いのだが、話が細々としているからか、カタルシスは弱い…。私の想像力不足か。
それゆえのこの評価だが、個人的に好きな形式である。