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ロスト・ボディ ~消失~のSSDDのレビュー・感想・評価

ロスト・ボディ ~消失~(2020年製作の映画)
3.5
■概要
大成している建築家は好きではない街パリで公演を終えて飛行機に乗るつもりだったが、土砂降りの中若い女性が空港に相乗りさせて欲しいと言われ承諾する。
渋滞と若い女性のせいで飛行機に乗り遅れてしまい、空港で次の便まで時間を潰すのだが、そこはかつて自分が設計した空港だった。その中で相乗りを許可した若い女性から付き纏わられ、不快で奇妙な話を聞かされる…。

■感想(ネタバレなし)
スペイン産のサスペンススリラー、面識のない女性に絡まれ、自身の殺人についての話を聞いてくれという病的な会話から発展していく奇抜な展開。

サスペンスとしては正直すぐに察しはつく点は多いが、全体の流れが読めずどう繋がるのかを楽しむ映画だった。

伏線もしっかりあり回収するのだが、どうにもこの若い女性の態度と内容が主人公と同調するごとく苛立ちを覚えるため、観ていて少しストレスを感じた。

1.5hと短めな作品の割に長く感じたので、夢中で観れたというわけでもなかったか。

しかし思い返せばあのシーンはなどと思うところはあるため、そこそこに楽しめる作品ではあった。色彩、映像美はしっかりあるため一定量クオリティは担保されているので観て損はない。

ちなみに良作だったロスト・ボディ2012年の映画とは関連性はない。












■感想(ネタバレあり)
・邦題のネタバレ感
自身が設計した空港で模型には赤い染みが出ている、ロストボディというタイトル、ジャケットから固まる前のコンクリートを連想させれる。この三つだけでなんとなしに主人公が誰かを殺めて死体をこの空港の下に埋めたというのは察しがついてしまうのが残念。原題のパーフェクトエネミーであったら早々に気づくこともなかったと思うので残念。

・細かな伏線
若い女性の背格好はエゴサーチした時に、何故かドアップで足元から画像が開かれた公演に来ていた女性からインスピレーションを受けて作り上げたれた像だったり、パリが好きではないのに来てくれてありがとうと言われていたことからパリに因縁があることだったりと細かく伏線を張っていることに後から気付くのでそこはかなり秀逸。
何個伏線があったか見返すのも面白いかもしれない。

・原題から考える
しきりに若い女性から紡ぎ出される"内なる敵"。それこそが主人公の目の前の女性を指していることはなんとなしに分かる。
"完全とは足し上げることができない状態ではなく、削ることのできないこと"という作中から何度か繰り返されるワードから考えるとこの完全な敵とは。

過去の殺人を犯したパリに来たこと、妻を埋めた空港にいることで潜在意識で罪を意識し、罪悪感から産まれていたらいたであろうオランダ産まれの娘を幻覚が敵として現れた。

"削ることのできない状態である敵"
つまりは呪いで殺した与太話も、意味不明な幼少の過ごし方も自己精神の反映であり、自分自身の要素を完全に備えた幻覚のため削ることができないということか。

・総評
最後のシーンでは傷すら全て塞がり回復していく姿で終わる…幻覚を殺したことで完全に罪悪感を潜在意識の深層まで追いやったことで、彼は失踪した妻を思う男として今後も生きていくということだろう。

なかなか話の辻褄をわざと合わせなかったりすることで、視聴側に全てを繋がらせず最後にドミノのようにストッパーの向きを変えて倒していく手法は素晴らしい。

主人公の気難しい感じでいて感情移入はしづらいが共感できるといったポジションから、急な不快なサイコ野郎まで落とし込むのも良かった。

ただ、1.5hが長く感じるほど、内容の不快さねじくれた思考を見せつけられるのがなかなか辛かったかな。
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