KnightsofOdessa

パラレル・マザーズのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)
2.5
[二人の母、二人の娘] 50点

2021年ヴェネツィア映画祭コンペ部門出品作品。前作『ペイン・アンド・グローリー』がアルモドバルの集大成的な作品だったわけだが、次作となる今回はキャリアで初めてフランコ時代に触れるという新たなステージを開拓した。本作品は題名通り、様々な"母親"が登場する。軸となるのはプロカメラマンのジャニスと10代の少女アナの二人で、彼女たちは未婚の母親として同じタイミングで同じ病室に入り、同じ日に出産を迎えた。長らく独身として生活してきたジャニスは、職場に来た人類学者アルトゥーロと知り合い、結婚している彼との子供を産むために独りでいることを選んだ。ジャニスの母親はヒッピーであり、娘にジャニス・ジョプリンから取った名前を付けたが、ジョプリンと同じく27歳でこの世を去った。それからジャニスを育ててくれた祖母は、フランコ政権下のスペインで、連れ去られて殺されたまま遺体が発見できない父親(ジャニスの曽祖父)を探し続けていた。翻ってアナは、グレナダにいる父親の下で暮らしていたが、同級生にレイプされ妊娠したため、厄介払いのように母親テレサのいるスペインにやって来た。テレサは学生時代からやりたかった女優業を細々と続けていたが、離婚してからは娘アナに一回も会わせてもらえず、再会したときにはほとんど他人のようだった。

"母親"についての物語は更に絡まり合う。ジャニスの娘セシリアは、どうやらジャニスと血の繋がりがないらしいのだ。もしかして、アナの娘アニタと入れ替わってる…?。そして、アナは娘アニタを亡くして家出し、ジャニスを頼って家にやって来る…云々。DNA検査のために口に綿棒を突っ込むシーンが三度繰り返され、本作品の支柱となる"血の繋がり"と"親子"について、それらがイコールで結ばれるかという議論へと繋げていく。しかし、前半のジャニスについての話を引っ張るあまり、アナとの衝突があまりにもサラッと流されてしまい、フワフワしたまま大団円を迎えるのは流石に無理がある気がする。1時間超えたあたりから"そうはならんやろ"とずっと言っていた。また、裕福な育ち故に戦争関連に無知/無関心なアナにジャニスがブチギレる場面のように、本作品はそういった主張が先鋭化しすぎて、全体的にお説教みたいになっていた。

ジャニスとアナの物語を雑に片付けた後、無理矢理取り付けられたかのような20分間で旧跡発掘についての物語が超スピードで語られる。自分の語りたいテーマを無理矢理自分の作風に引き寄せて接合したみたいになっててぎこちなかったが、何作か重ねたら良くなる気もする。
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