まりぃくりすてぃ

パラレル・マザーズのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)
3.9
前世紀のうちにいろんな人がいじくってた類いの素材なんだけど、21世紀的アプデがちゃんとできてるっぽかった。細部とか心情とか丁寧に作っていっててルックも編集も上々、主演のレベルも強!だから、ずっと物語の引力がキープされた。
アルモドバルらしさは、時々の赤色の持ち込みとロッシ・デ・パルマさんぐらいで、そんなに尖ってなくて、「監督も大人になったんだなぁ。いい年の取り方ぁ」と肯定心いっぱい。
分娩という物事を、男性監督が撮れば敬意の定型化によるイベント感、女性監督が撮れば肌感覚強め、になるところ、フツウの男じゃないアルモドバルだからこそ「女性(母)の気持ちが何でこんなにわかるのぉ?」と安心頂戴を感謝したくなるぐらいに肌感覚が丁度よかったかも。
ペネロペがショック受ける場面なんかでは、あたし泣きそうになった。

ところが、、
ジャニス・ジョプリンの楽曲が降臨したシークエンスから一気に「えっ、そこへ行くか」の小炸裂で、あたしは苦笑う。
以降、見づらさが少々。
ペネロペの説得力が終始完璧なのに対し、助演ミレナ・スミットのキャラ設定(演技・演出ふくめて)が滑ってる。彼女の悲しみは必要量が滲まず、子供一人産んでる者としてのふくよかな強さも全然なかった。挙げ句の果てに、ミレナは終盤に一個の脇役位置まで後退しちゃった。アルモドバルの限界か??

赤ちゃん話と発掘話が、最終的にも繋がらず。。

まるで、イイ気分でぱくぱくしてたプチプラのはずのスイーツが、途中から調和不足の “非・逸品” に思えてきちゃった感じ。

卵を使ったスポンジに例えれば、、、
パータ・ジェノワーズの手法(共立法)で、きめ細かい美味しいバター風味のを作っていったはずが、途中からパータ・ビスキュイ(別立法。膨らんだ、きめ粗く、軽い生地ができる)へと暴走し、結果として “完成度が迷子” してる。きめ細かさだけを徹底追求すべきところを。
ペネロペ部分が終始良かったのは結局ペネロペのお蔭様か。脚本は全然カンペキじゃないよ。
「DNA」というキーワードを素敵なグラニュー糖にしたつもりが、バター(助演者ミレナ)への面倒みが良くなかったために名匠パティシエらしいシゴトが仕上がらなかったようね。。。。。。