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パラレル・マザーズのEyesworthのレビュー・感想・評価

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)
4.5
【紡がれる鎖の絆】

ペドロ・アルモドバル監督×ペネロペ・クルス主演の同じ日に母親になった2人のシングルマザーがたどる運命と不思議な絆を描くヒューマンドラマ。

〈あらすじ〉
シングルマザーになることを決意するジャニス。出産を控え入院した病院で、彼女はアナと出会い、彼女もひとりで出産すると知り仲良くなっていく。やがて2人は同じ日に女の子を出産し、再会を誓い合って退院する…。

〈所感〉
ペドロ・アルモドバル監督といえば類型的ではない多面的な女性の描き方に特色がある人だと思う。よって本作も子供の取り違えによる母親同士の絆や心情の変化が大きなテーマの作品かと思いきや、実はスペイン内戦による虐殺の歴史というもう一つの重めの線も描かれており、一見交わることのない2つの物語が同時進行で紡がれていく。これらのファミリーヒストリーという代々続く長い鎖をきっちり重ね合わせてまとめ上げた点が評価できると思う。写真家のジャニスは、スペイン内戦で殺され埋められた曾祖父の遺骨発掘を、法人類学者のアルトゥロに依頼する。そして終盤で集団墓地の発掘により人名の特定が進んでいく。なんの関係もない人からすると、それらは名前の無い亡骸であり、特に重要度が高いとは思えないのが事実だ。それでもジェニス達行き場の無い想いを抱える遺族にとっては何よりも大切なことであり、彼ら親族を発掘して形を整え、名前を再び与えることが最高の供養だったのだろう。火葬である日本ではなかなか想像が難しいが、地中に埋まる人々と今を生きる人々はまさに地続きのイメージなのだろう。前半は微妙だったが、後半の意外性にしてやられた。ペネロペ・クルスは変わらず美しいし、カラフルで凝ったインテリアがスペインらしく楽しい作品だ。車は知らないけど、SUZUKIのライムグリーンみたいなジムニーかわいい。
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