さうすぽー

死刑にいたる病のさうすぽーのレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
4.0
自己満足点 79点

いやぁ怖い((( ;゚Д゚)))
観たあと劇場出てなお恐怖が残るのは久々ですね。


死刑囚が「罪の一部が冤罪だ」と告発する内容は以前白石監督が作った「凶悪」にも共通していますが、あちらは実話を元にした作品でこちらは小説原作のフィクション。
また、告発の調査をさせるのが記者ではなく何故か岡田健史演じる雅也という一般人に調査を頼ませるというのも特徴でした。


今作の魅力はサイコパスの心理や人物像が非常にリアルだったことです。
邦画に出てくるサイコパスは殺害の動機が「人を死ぬのを見てみたかった」等という安直な理由が多くて、どこか物足りない所が多かったのですが、今作ではシリアル・キラーの特徴や殺害の動機にサイコパスらしさが出ていて興味深かったです。

そのシリアル・キラーを演じた阿部サダヲが本当に素晴らしい!
人当たりの良い感じでどこか表情に色味が感じらず目にも光がないという、なおかつ静かな狂気を感じる様を見事に表現してました!

また、岡田健史の演技は今回初めてしっかりと観たのですが、正直まだ彼が演技力があるのか解りません。しかしながら、この役には非常にマッチしていたと思います。社会に馴染めなさそうでどこか根暗な所が彼の少し未熟さの残る台詞回しとどことなく滲み出るスター性から見事に役を表現していました。

そして、一番驚いたのはキーパーソン金山一輝を演じた岩田剛典です!
彼の今までの演技は良くも悪くも「3代目 J soul brothersの岩田剛典」という感じが出ていたので、演技が上手くてもどこか物足りなさを感じてました。
しかし、今作は正直終盤になるまで彼がロン毛の金山を演じてる事に気が付かなかったです。彼の暗くてどこか陰鬱な演技が気持ち悪く、もはや「3代目の岩田剛典」は完全に消えてました!


変わって演出ですが、
劇中の阿部サダヲが被害者に行う拷問シーンは白石監督作品らしくエグく、目を背けたくもなりましたが、シリアルキラーの恐ろしさを体現していて良かったです。
また、面会室の場面ではガラス越しに二人の姿が重なって映してる場面が上手いと思いました。


この映画は自分は結構楽しめたのですが、「微妙だった」と評価する人も少なからずいて賛否分かれてる気がします。
確かに、相変わらずの説明過多な所や映像表現が大袈裟で臭く感じる邦画あるあるが目立つ部分もあります。
突っ込みどころも確かにあります。
ですが、今作は「この場面、この登場人物いる?」というような場面が実は最後まで観ると実は重要な場面だったというのも解り、そういったサプライズを含めて今作は結構怖かったです。

不必要な場面が少なく、2歩3歩先を読むかのように伏線を回収するミステリーとしても秀逸で、演出に怖さを感じたりと、観た後にも怖さが残る作品として評価したいです!