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死刑にいたる病のKUBOのレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
4.0
阿部サダヲのサイコパスが怖い!

「犯した24件の殺人事件の内、1件だけ自分がした殺人ではない」

この微妙な冤罪を晴らしてくれ、と殺人犯「ハイムラ大和」(阿部サダヲ)から突然頼まれた青年「筧井雅也」(岡田健史)。

雅也は拘置所に通って、ハイムラと話をしながら過去の事件を辿っていく。

頭脳明晰な殺人犯が、協力者の過去のトラウマを利用するような展開が『羊たちの沈黙』を思い起こさせたが、雅也があるものを発見したところから、ストーリーは思いもよらなかった方向に進み出す。

人当たりがよくて、親切で、誰からも好かれるような男が殺人鬼。笑顔で接しているうちに、少しずつ人の心を操っていくところが怖い、怖い! 裁判シーンでも理路整然として饒舌で、二枚目ではないが『テッド・バンディ』のよう。

ハイムラの話す言葉は、信じてしまいそうになるが、それが嘘だったとしたら、真実は真逆の顔を見せる。事件と雅也の真相は最後までわからない。

この「いい人」に見えながら「何を考えてるのかわからない人」という阿部サダヲの演技が素晴らしい。空洞のような瞳が怖い、怖い!

少年少女を拘束し、意識のあるままで生爪を剥いでいく、見るのも辛いシーンを撮りながら、監督はずっとニコニコして楽しそうだったというのだから、本当のサイコパスは白石和彌監督か?(笑)

キャスティングで言うと、個人的には岩田剛典だけは違う。

ラストはやり過ぎって思ったけど、大筋原作通りだと言うから仕方ないか。

今までの直接的なバイオレンス映画ではなくて、かなりサイコスリラーな感じ。白石和彌的には、新しいジャンルの作品。かなり怖いけど、覚悟してどうぞ。
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