垂直落下式サミング

死刑にいたる病の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
4.5
傍聴席に阿蘇山大噴火というリアリズム。確かに半分は法廷劇だからって、いるか?これ。サンジャポ過ぎて、ちょっと笑ってしまった。
ストーリーは、Fラン大学でくすぶって時間もやる気も持て余していた大学生のもとに、死刑判決を受けた連続殺人鬼から「会って話がしたい」という旨を綴った一通の手紙が届くところからはじまる。死刑判決を受けた連続殺人鬼は、自分の犯行として立件された九件のうち、最後のひとつは自分の関与するものではなく真犯人は野放しだと、アクリル板越しに語りはじめた…。
退屈な日常にふってわいた非日常に、天啓を得たようにのめり込んでしまう若者は、事件のあらましそのものよりも、男の人間的な魅力に惹き付けられていくようだ。
調査を進めるうちに、凡庸だと思っていた自分は、実は特別な存在なのかもと、気持ちにバイアスがかかっていく様子は青春映画のようだが、やがてドス黒い深淵を覗き込んでいたことに気付く。
主人公が、独自の方法論ちからで真相に迫っていくようにみえて、実は意思を操られているかのように、向かうべき場所に誘導されている点に物語の旨味がある。素人がこんなこと首突っ込むもんじゃないな。
刑務所の面会所ってあんな感じなのかな。身内にパクられるような人いないから、未知の場所。面会に来てる奴らも半グレ世界の住人たちが大半で、真面目そうな若者が待合室の椅子に座っているのは、場違いな感じ。
出色は、犯人の回想シーンとして出てくる人体の欠損描写。吐き気を催すような残酷描写が挟み込まれるので注意が必要だ。両手足を拘束されて泣き叫ぶ女の子。いきなり、ものすごい嗜虐美。
真夜中、生爪剥ぎ取りから拷問がスタートして、猿轡をかまされた少年・少女がみてらんないくらい恐怖と苦痛で表情を歪める様子を撮しておいてから、空が白んできた頃には痣だらけで涙と鼻血まみれの顔をグッタリさせながら赦しを乞う声。具体的な描写はないのに、ちゃんと痛みが伝わる。すごくよかった。
両手足の腱を切られて、苦しみながら泥のなかを這っていく女性。これもショッキング。CGの血が吹き出したり、特殊メイクで内蔵が飛び散ったり、派手なスプラッターではなくても、人体の破壊は人間性の否定によって表現できるじゃないか。当時のニュースでアナウンサーが、「拷問」って言葉をハッキリと口に出して言ってるところとか、世も末って感じでたまらない。
殺人鬼・阿部サダヲは顔が怖い。やっぱりマルモやってた時から怖かった。年齢がわからないタイプの顔だから。化け猫の顔だね。尾が二股に裂けてそう。