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死刑にいたる病のhatraのレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
4.0
良かった。阿部サダヲの怪演が素晴らしい。いくら何でも黒目が黒すぎる。

なんとなく「被害者遺族を中心にした法廷もの」と勝手に思っていたが、実際はミステリーを含んだ犯罪心理サスペンスだった。
「死刑にいたる病」とは何をもってしてなのか、真相解明に奔走する主人公はどう変化していくのか…
人間の暗部で蠢く機微を感じ取れるような、そんな映画だった。

序盤は冗長で不安だったが物語が動き出す場面から一気に惹き込まれる。
二転三転し真実に近づく過程は常に適切な情報量。
展開する度に物語は、頭ではなく心に働きかけてくる。
また淡々とした会話劇も視聴覚に訴える演出が凝っていて良かった。

主人公は共感しかねる部分は多いがあくまで観客視点で同調しやすい。
無鉄砲な行動力や自意識過剰な厭世観、それでいて染まりやすい危うさなど、この年頃の青年のリアリティを感じる。
一方阿部サダヲの死刑囚役はシリアルキラーの心理やある種の魅力というのを丁寧に描いてひたすら恐ろしかった。
正直カリスマ性を感じてしまったのは自分だけではないだろうし、それがしっかり脚本の仕掛けとして活きていると思う。
ラストは想定外の角度からぶん殴られて自分の想像力を悲観した。気味が悪くも綺麗にパズルが完成した感覚を得た。

総評として、正直観る側の経験で共感に差が出る内容だとは思う。
ある人からすれば単に「つまらない映画」なのかもしれない。
しかし、少なくとも個人的には意義のある映画だった。
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