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人と仕事のKKMXのレビュー・感想・評価

人と仕事(2021年製作の映画)
3.9
 撮影予定だった保育士の映画がコロナで中止となったため、代わりに急遽撮影された作品。コロナ禍におけるエッセンシャルワーカーを志尊淳と有村架純がインタビューするというドキュメンタリー映画でした。
 突貫工事で作ったガーエーでしょうからやや散漫な印象で深くテーマを追求するタイプの作品ではないですが、観応えは十分にありました。

 本作を観てまず感じたことは、民俗学的な価値があるなぁというものです。数十年後、数百年後に本作はコロナ禍の日本の様子を捉えた映像として良い資料になりそうな印象です。今の世の中はいくらでも映像は残るでしょうが、ちゃんと作品化されており、インタビュー対象が比較的多岐に渡るため、22世紀人が観るには悪くない資料だと思います。インタビューというのは、それを行い残しておくということだけで価値があると感じます。

 インタビュー内容については、それぞれのリアルがあってどれも尊いものではあります。中でも印象深いのはセックスワーカーとワンルームっぽい部屋にシェアして住んでいる3人の若者、養護施設の人々、ホストクラブの経営者です。

 セックスワーカーの方々と若者の話はギリギリの中生きている人たちがいかにコロナ禍でダメージを受けているかが伝わりました。レールからはみ出てしまった苦しい人たちにつきまとうカネの問題と社会的サポートの問題が当事者の語りではっきりと伝わりました。特にこのような災害時はギリギリレールに踏み留まっている人たちがガツンと落っこちてしまうため、胸が痛い。シングルマザーの貧困問題も関連しているため、平時のソーシャルサポートの薄さも嘆かわしい。
 また、その背後に男性からの暴力という側面も追撃であったりするので遣る瀬無い。metoo運動で多少潮目が変わったのは救いではありますが、これは21世紀が取り組む問題だと思います。
 養護の子たちの施設を出てから問題については、コロナ関係なくシビアですし、国が本腰入れてなんとかしないといけない問題ですね。18歳を超えてからのサポートが薄すぎる。それを解っているからか、養護の子たちがみんな異様にしっかりしているのも切ない。本格的なサポートなしで世に出るため、しっかりせねばならないと環境が強いるんでしょうね。ドロップアウト率の高さも悲しいです。頑張りすぎると続かないですから。

 ホストクラブの経営者はシビアな中を生き抜いてきたらしい視野の広さと懐の深さがあり、かなり説得力ありました。特に、ステイホームで星野源で踊ったりできる連中は一部に過ぎない、そんなにホームが居場所である人は多くないとの語りは、まさにその通り。ホームから外れた人たちの居場所を経営しているだけあり凄みがあります。コロナ禍が終わってそれ以前に戻るわけではないし、戻るほどの価値があるのかという意見も両手を上げて賛同です。何が大事なのか考えるチャンスではないか、との意見はまったく同じことを考えていたので納得です。


 志尊淳と有村架純のコロナ問題への向かい合い方も個性が出てて良かったです。それぞれ誠実でした。
 志尊淳はSNSで発信したりと、かなりアクティブなタイプ。志尊淳をはじめて見ましたが、好感持ったので、是非『佐々木、イン、マイマイン』のような作品に出てほしい。
 有村架純は割と受け身っぽいけどしっかり落とし込んで考える内向的なタイプ。これまであまり興味を持てなかった有村架純ですが、そこそこ好きになりました。笑顔が魅力的でしたし。しっかり受け止めるタイプなのでいきなり竹馬靖具の映画とかに出てほしいです。
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