矢吹健を称える会

ある男の矢吹健を称える会のネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

 是枝みたいな家族映画かと思ったらどんどん社会派っぽくなり、『砂の器』になり、最終的にほぼ『CURE』になるという怒涛の展開だが、それをリードする役者たち、特に妻夫木聡の悠々たる演技が素晴らしい。「差別」を受け止めなれているのであろうその紳士的なふるまいの裏に、怒りと失望がしみのように広がっている/いく様、探偵がその捜査を通して変質していく様が、スリリングで良い。

 ただ、清野菜名&仲野太賀のパートは、不要とまでは思わないにしろ、ちょっととってつけたような感触がある。そもそも旅館の次男坊、ドラ息子なのかどうか知らんが、戸籍変えるほど辛い境遇だというのがよくわからんというのもあるし。まあ、あの兄貴と縁切りたい気持ちはわかるけれど。

 石川慶という監督の作品は初めて見た。ここぞというシーン(安藤サクラが息子の部屋で会話するシーンとか)では引いた位置から長回しというのも、慎ましくて良いなと思う一方、地味すぎやしないかと思う時もあった。安藤が死んだ子供のことを窪田正孝に打ち明けるシーンでは、なんかじりじりカメラが安藤に寄っていく。(個人的な好みでは)これもあまり好きじゃない。