福福吉吉

ある男の福福吉吉のレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
里枝は「大祐」と再婚するも、不慮の事故で「大祐」が亡くなってしまう。そして「大祐」の一周忌に現れた兄の恭一から亡くなった「大祐」が別人であることを告げられる。里枝は弁護士の城戸に亡くなった「大祐」の身元調査を依頼する。

◆感想◆
身元を偽って生きた男の人生とその男に関わった家族や身元調査を行った弁護士が抱く複雑な感情を描いた作品となっており、生まれや親の行為によってレッテルを貼られることで別人になりたいと思う人の感情に共感できるものになっていました。

ストーリーとして、弁護士の城戸(妻夫木聡)が里枝(安藤サクラ)から亡くなった夫の「大祐」(窪田正孝)の身元調査を行う姿を追っていき、「大祐」の人生が明らかになっていくもので、分かりやすく、それでいて城戸や里枝、「大祐」の心情が伝わってくるものになっていて、心を揺れ動かすものになっていて、私は最後までこの作品に見入ってしまいました。

弁護士の城戸は優秀で実績を積み上げていましたが、帰化した在日朝鮮人であることで妻の家族から揶揄される部分があり、ストレスを感じていました。彼は「大祐」の身元調査を続けていくうちに親の行為によりレッテルを貼られた「大祐」の心情を理解するようになります。深く付き合わないとその人の中身を知ることができないので、つい親や生まれなどの形式的な情報で人を判断してしまう安直さが良く出ていました。

里枝やその息子は「大祐」と過ごした日々に幸せを感じており、里枝たちにとって「大祐」がかけがえのない存在になっていたところもしっかり描かれていて、ラストの里枝と息子の会話がその全てだったと思います。

弁護士の城戸が「大祐」が如何にして他人になりすましたかを調査するパートはミステリー的な面白さがあって、戸籍の売買で刑務所に収監されている小見浦(柄本明)とのやりとりはとても面白かったです。全てを見透かしたような小見浦の曲者感が雰囲気を一変させていて緊張感がありました。

とても面白い作品でした。幸運ながら私は身元を偽らず生きてこれましたが、他者から安易な決めつけで私を貶めるようなことがあったら、私はどうすれば良いだろうかと考えてしまう作品でした。

鑑賞日:2024年10月11日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
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